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神様の願い事

第9章 ねこのきもち




翔「俺の、本音」


正直に話した。
貴方が好きなんだと、思いの丈を伝えたつもりだ。


智「え、と」


俺のこんなありえない部分を、晒け出した。


智「俺、かえる」

翔「は?」

智「準備しなきゃ」

翔「え、ちょっと」


いやそこは、普通返事を返す場面だろ。


智「あ...?」


もぞもぞとベッドから這い出ようとして、布団を捲った智くんは停止した。


智「え、俺 服」


裸だった事にも気付いてなかったのか。


智「なんで着てないの...」


バサッと捲った布団を引っ張り上げ、自分の身体を今更ながら隠した。


翔「猫だったから。服なんて着てなかったでしょ」

智「あぁ、そうか…」


俺の一言に余程混乱したのか、猫になってた事も忘れていたようだ。


智「服貸して」

翔「いや、ちょっと待ってよ」


これで帰してしまったら、またいつものパターンだ。
なんの展開も起こりはしない。


智「早く帰らないと時間が」

翔「まだ五時だよ。入りは昼なんだから余裕」


時間時間とうるさいから、論破したのに。


智「つか、ちょっと頭冷やす」

翔「は?」

智「だから、一旦帰る」

翔「冷やす必要なんて...」


この期に及んで“一旦持ち帰って考える”とか言い出したし。


翔「帰ったら気まずくならない? 気まずいの嫌だって言ってたじゃん」

智「や、もう十分気まずいし」

翔「だったら尚更だよ。ちゃんと話そう」


気まずさを隠す事無く全面に押し出す智くんは、明らかに動揺している。
起き上がりかけた智くんの肩を掴んで語りかける俺に見向きもせず、微動だにしないんだ。


翔「こっち見て」


無言のまま、俯いて。


翔「俺を、見て?」


振り向きもせず、固まった背中しか見せてくれない。


智「っ、ちょ...」


だから俺は掴んだ肩を引っ張って、その身体をベッドに倒した。


智「なんだよ...」


どんな顔をしているのか表情が良く見えるようにと、引き倒してしっかりと智くんの顔を覗き込んだ。


翔「“なんだよ”はコッチだよ。どうして見てくれないの」


そうやって俯いて、顔を隠して。

また心まで隠そうとしてんだろ。



どんな答えでもいいんだ。



智くんの本心が、知りたい。





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