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神様の願い事

第9章 ねこのきもち



今までの事を総合的に見れば、ひょっとしたら本当に智くんは俺の事が好きなのかもしれない。


翔「俺は正直に話したよ」


たぶん、いやきっと、それは濃厚だ。


翔「俺の本音聞いたよね? だから、智くんも話して」

智「翔くんの、本音...?」


言っただろう、貴方と恋がしたいと。


翔「智くんが、好きだ」


なのに小首を傾げそうな勢いで怪訝な顔をするから。
だったらと、どストレートに言ってやった。


智「は...?」

翔「好きなんだよ、貴方の事が」


何故そんな簡単な言葉を理解するのに時間が掛かるんだ。


智「それ、本気で言ってるの?」

翔「そうだよ」

智「好きって、え、それ意味わかってる?」


何故だか智くんは俺を窘めるような話し方をする。


智「只の、仲間の好きとかそういうヤツと勘違いしてるんじゃない?」

翔「してないよ」

智「や、だって、好きってそんな事...」


俺に引き倒されたまま、顔の両脇に手を付かれて。
真上から俺に覗き込まれて、切迫感だってなかなかのモノの筈なのに。

なのにそんな俺を振り払おうともせず、逃げ出そうともせず。

ただ眉間に皺を寄せて怪訝な顔をしてる。


翔「智くんも正直に話してよ。俺の事どう思ってるのか」

智「どうって、言われても...」


こんな状況でまだyesと言わない。
それならば、本当に俺の勘違いだったと言う事なのか。


翔「これ、俺に対する“愛”じゃないの?」


でもまだ諦めない。
だってその首には、何度も修理した古びれたネックレスが光ってる。


翔「こんな古いのに、大事に持ってんじゃん...」

智「こ、れは」


智くんを押さえ付けるように伸し掛ってるから分かる。


智「デザインが気に入ってるだけで」


その心臓が、大きく跳ねた事を。


智「翔くんがくれたからとか、別にそう言うんじゃ...」


そっと首に指を這わすと、脈も随分と荒れていた。

あくまで自然に、ぎこちなさを感じさせないようにと冷静なフリをして話しているけど。


翔「じゃあこの鼓動はなんなの...?」



正直な言葉を吐けないんだったらもういい。



その身体に、聞けばいいだけの話だ。





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