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《sideO》



好きとは一体どういう事だ。


智「なにして...」

翔「聞いてるんだよ。智くんの心臓に」


そう言う翔くんは、俺の胸に耳を擦り付けた。


翔「多分こっちの方が正直でしょ」


“好きだ”その一言に俺の心臓は震える。
それと同時に困惑した。


智「いや、ちょっと待って...」


そんな言葉、翔くんの口から出てくるなんて想像もした事無かったんだ。


智「よく、考えて」


そんな単純な言葉に、俺は浮かれそうになった。
だけど待て。
相手は翔くんだ。


智「それがどういう意味か、ちゃんと考えて」


こんな誠実な人間、他に居ただろうか。
男らしくてかっこよくて、賢くて。
少し黙ったと思ったらその頭の中で色んな考えを巡らせて。
それで口を開けば皆があっと驚く答えを導き出す。


翔「考えたよ。俺、おかしいんじゃないかって、何度も」

智「で、どうだったの...」

翔「やっぱおかしいみたい」

智「ほら、やっぱり」

翔「それ程智くんが好きなんだって事に、気付いた」


だけど馬鹿で単純で。


智「は...？」

翔「今更ながら思い知らされたよ。やっぱ俺は智くんが好きなんだ」


考えて導き出した答えを、そうそう覆す事もしなくて。


翔「あ。心臓止まったね？」

智「んな、バカな...」


賢いくせに柔軟で、かと思えば急にカタブツ感を出す事もあって。
だから今はカタブツになってるんだ。
“俺の考えは間違ってない”と、頑なになっているだけだ。


翔「これ、俺が磨いてあげよっか…？」

智「え？」

翔「気に入ってるんでしょ？ だったら、もっとピカピカにしてあげるよ」


“心臓が止まったね”と笑う翔くんは、俺の息の根を止めようとでもしているのか、この首に揺らめくネックレスにキスを落とす。


翔「大丈夫？ 心臓、破裂しそうだけど...」


それでまた笑うんだ。
俺の動揺を分かってやってるのか。


翔「智くんは、俺の事嫌い...？」

智「そんな事」

翔「じゃあ、好き？」

智「そ、れは」


俺がどんな目で翔くんを見ていると思ってんだ。
それと翔くんは同じだと言うのだろうか。



こんなありえない感情を、こんなありえない人に。



“やっぱ間違いだったわ”とか笑おうもんなら、俺はもう立ち直れないんだぞ。