神様の願い事
第10章 恋人の定義
智「ずっと我慢してたから、さ」
翔「うん...」
壁に凭れて、横目で俺を見上げながら智くんは話す。
智「でももう、さすがに無理かなって」
翔「ん」
その目は丸くて垂れてて。
水分を含んでキラキラしてて。
智「だからちょっと、ごめん...」
小さく開く唇も、まるで甘えているように見えた。
翔「智くん...」
ぴょこ
翔「ん?」
ぴょこっ
翔「んん?」
にょき
智「っ、はぁ~...」
翔「え」
智「いやもう、ずっと我慢してたんだよね」
“ん~っ”と気持ち良さそうに伸びをする智くんは、その頭と後ろに猫の気配を醸し出して。
翔「あ、我慢って、その事?」
智「へ? うん」
無邪気そのまんまの顔を晒した。
翔「あぁ、そ...」
智「え?なに?」
翔「いえ別に」
智「ふうん?」
俺の貫かれた心臓。跳ねた心臓は一体どうすれば。
智「ふふ、やらしい事考えてた?」
翔「へっ」
智「さすがに外じゃね」
楽屋ではしたのに?
智「でも、誰も来ないんだった…」
翔「え」
俺が考える隙も与えないとは。
翔「さ、としく...」
ちょっと頭を整理して、落ち着こうと思ったのに。
それなのにその隙も与えずに、智くんは素早く俺の首根っこを掴んだ。
智「実はこっちも、結構限界だったんだよね…」
首根っこを掴むと、なかなか乱暴に俺を引き寄せ唇を奪う。
いや、キスなんだけど。
奪われたと言う方が妥当かと思われるようなキスを智くんはしてくる。
翔「ん...」
その熱い舌に俺も応えて。
智「ぁ、ふ」
すると、小さいのに熱い吐息を吐いて。
その息遣いで、俺を揺さぶるんだ。
智「ぁ、翔くん...」
さっき跳ねた心臓は、落ち着く暇も無く更なる刺激を受けて。
智「も、駄目」
吐息混じりに言うそんな言葉は、俺の心臓を破裂させそうな勢いだ。
智「ん、そろそろ、注文」
もはやメシなんてどうだっていい。
俺は智くんを、喰いたい。