テキストサイズ

神様の願い事

第10章 恋人の定義

《sideO》



智「嘘ついたの?」

「嘘なんてついとらんが?」


次の日、ニノから鍵を返して貰って俺は漸く自宅に戻った。


智「治んないじゃん」


やっと幸せを見付けたというのに、未だ治らない猫化。
それについてじいちゃんに抗議していた。


「それはお主が“本当の幸せ”を手に入れてないからじゃ」

智「いや、入れたよ」

「と言うと?」

智「翔くん。俺の事好きなんだって」

「おぉ!」

智「ね? だから俺は今すんごく幸せなの。なのに戻らないの。だからなんで?って言うハナシ」


そう言えば“呪い”とか言っていたな。
俺こんなに普通に話してるけど、まさかマジで怖いオバケなんじゃ。


「なのに戻らない?」

智「うん」

「おかしいな...。解き方は忘れてしまったが、“幸せ”さえ手に入れれば戻るようになってる筈なんじゃけど」


解き方忘れたとかどういう事。


智「解こうと思えば解けるの?」

「無理じゃよ?」

智「でも、解き方あるんでしょ?」

「忘れたもん。てか、もう覚える能が無いぞよ」

智「イヤイヤ」


なにこの呑気なオバケ。
他人事だと思ってるにしても、さすがに呑気すぎだろう。


智「マジで困るんだよ。多分もう、翔くん見たらすぐ出る」

「おぉ、そんなに心を許してしまったのか」

智「抑えんのスッゴい辛くて」

「そこまでの信頼を預けておきながら、戻らないとはのぅ...」


何やらじいちゃんはブツブツと悩み出して、分析をしたのかボソッと声を出した。


「という事は、やっぱ“翔くん”の気持ちがそれ程」

智「え」

「いやいやそんな筈は」

智「は?」

「だって死ぬ間際に泣きながらあんな事言うんだし...、や、でも笑ってたな」

智「なに? なんの話?」

「あ、あぁいや! コッチの話じゃ。うぉっほんっ」


態とらしい咳払いをした後、またもや分析を話し出した。


「...ひとつ聞くが、お主達はどこまでの関係じゃ?」

智「だ、だから一応、“恋人”...?」

「照れてる場合じゃなくてだな...」


少し躊躇いがちに言う俺に、呆れ口調で返答した。

そんなじいちゃんは、“なるほど、それか”と一言呟いたけど。


「まだチューだけとはのぅ...」


何がなるほどなのか、当事者の俺にわかるように説明しろってんだ。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ