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神様の願い事

第10章 恋人の定義

《sideN》



寝惚け眼の半猫人は、目を擦りながらコーヒーを啜っている。


和「ねえ、前より酷くなってない?」

智「あぁ、もう無理なんだよ」

和「無理ってなによ。出っぱなしじゃん」


どうやら諦めたみたいだ。


智「我慢すると疲れるんだよ。体がもたねぇ」

和「そんなに?」


だから楽屋くらいは自由でいさせろと、開き直った。


和「でもそんなんじゃ、困るでしょ?」

智「そうなんだよ。恥ずかしくてさ」

和「恥ずかしい?」

智「もぅたちっぱなしでさ」

和「へ? 勃ちっぱなし?」


なんだよ、誰がドキドキしないとか言った。
ちゃんとドキドキしてんじゃねえか。


智「翔くんがさ、笑うんだよ。“これって嬉しいからでしょ?”とか言って」

和「嬉しい?」

智「どんな普通の顔したってバレバレなの。この尻尾のせいで」

和「あ、尻尾が立ったんだね」

智「本当もぅたまんないよ…」


なんだよ尻尾かよ。
勃ったんじゃなくて、尻尾が嬉しさのあまりピンと立っただけの事だった。


和「ふふ、嬉しいんだ」

智「そりゃ、だってお前もそうじゃないの?」

和「まぁ、そうですけど」


ちょっと心配したけど、どうやら人並な感情は持っているらしい。


和「二人でいる時ってどうなの? 緊張しない?」

智「や、それは無いかな」

和「無いの?」


翔さん、ご愁傷さまです。


智「緊張って言うより、ヘラヘラしてるかも(笑)」

和「へ?」

智「なんかさ、耳とか生えちゃったらもうふにゃふにゃなんだよね」

和「あぁ、言われてみればそうかも?」

智「や、こんなモンじゃないよ? なんだろな、ほらアレ、マタタビみたい」


我慢を解き放って自分を解放した時の気持ちよさったら堪んないんだよと、大野さんは笑った。


智「翔くんがそこに輪をかけるんだよな」

和「どんな?」

智「ん~、あの声かなぁ? 雰囲気ってか、和んじゃうんだよね」

和「んで、ヘロヘロになるの?」

智「そう。もぅアイツ、マタタビそのものだよ(笑)」



そんなヘロヘロならなんだって出来ただろうに。


という事は、翔さんがそれ程奥手と言う事か。





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