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神様の願い事

第10章 恋人の定義

《sideO》



やっぱりコイツはマタタビだ。


智「ん、翔...」


“ベタベタするのは苦手”だとか昔どっかの雑誌で言ったような気もするが。

誰が言ったんだって話。


翔「また眠そうだね...? 先お風呂入った方が」

智「ん、入るから、もうちょっと」


唇の隙間から聞こえる低い声に、つい俺は目を閉じてしまう。


翔「もうちょっと?(笑)」

智「まだ、足りないから...」

翔「ふふ、うん...」


なんなんだこの甘えん坊野郎は。
自分で言ってて引くわ。


智「ん、ふ」


だけど俺の腕は翔くんに絡まって、その身体を離そうとしない。
自分の意思かどうかもわからない程に、その力は強く。


翔「っ、さと」


俺があんまり引き寄せるから、そのままソファーに倒れ込んでしまっても翔くんだって止めないし。

俺の上に乗っかった翔くんは、俺の頬を掴み直して更に深いキスをする。


智「んん...」


俺はと言うと、翔くんが乗っかったのをいい事に、その身体に尻尾を巻き付け自由になった両手で更に翔くんを引き寄せた。


智「ぁ、は...」


熱中するキスは、ほんの少し苦しくて。


翔「智くんのキスの方が、“エロい”よ」

智「しゃべんないで、もうちょっとだから」

翔「ん、ごめん(笑)」


何がもうちょっとなんだか。
言っててもその意味は自分でもわからない。

だけど、もうちょっとなんだ。

何かが足りないんだ。


智「もっと、本気のヤツして」


どれだけ深いキスをしても、何か満たされなくて。


翔「出してるよ、本気...」

智「もっと、だよ」


飽きるほど長いキスをしても、まだ足りないんだ。

もっと、もっとだと俺の奥が言ってるんだ。


翔「ん、痛いよ...、力入れすぎ(笑)」


この燻る気持ちをどう誤魔化せばいいのかわからなくて、俺は力任せに翔くんを抱きしめた。


智「は、ぁ... 俺が、好きすぎるのかな…」


好きすぎて、気持ちが高ぶっているだけなのかな。

だってこんなに熱いのに、まだ足りないとかおかしいだろ。


翔「え?」

智「や、なんでもない。風呂、入ろ?」



どうすればこの気持ちを抑える事が出来るのか。



とりあえず、このマタタビから離れて頭を冷やすか。




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