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神様の願い事

第10章 恋人の定義



俺が手を掴むと、ふと智くんと目が合う。

バチッと合った目は逸らせないんだ。


智「もっかい、着替えなよ…」

翔「うん...」


そんな会話を続ける気も無く、互いに顔を寄せる。


智「ん...」


寄せた顔は、当たり前のように目の前の唇に吸い付いて。
後ろから俺を覗き込むようにキスをする智くんは、そっと床にドライヤーを置いた。

ゴト...

小さな音でも、静かな部屋に響く。
唇を擦り合わせる音でさえも聞こえそうな程だ。


智「ん、ふ」


智くんの呼吸が上がってくる。
熱く湿り気を帯びた吐息が、智くんの唇から漏れる。


智「ぁ...、もぅ、終わり」


掴んだ手首から感じ取る脈は強くなっているのに、そこで智くんは止めようとする。


翔「まだだよ」

智「ん、だって、もう」

翔「もう、なに?」


目だってとろんとしてきているのに、何を止める必要があると言うのか。


智「やっと落ち着かせたのに、またこんな...」

翔「落ち着かせた?」

智「しょ、くんが、濡れたまま出てくるから...」


欲情したんだ。
智くんは俺の濡れた姿を見て、胸を高鳴らせた。


翔「落ち着かなくていいじゃん」

智「だって、こんなんじゃ抑えられな...」


なんだ。
わざわざ自分を抑えようとしてただけなのか。
そんな事しなくていいのに。


翔「そんな必要ないよ。だって、俺達“恋人”でしょ...?」


貴方がどういうつもりで抑えようとしたのかは分からないけど。
俺の気も知っておいて貰いたい。


翔「もう、キスだけじゃ足りないよ」


俺がどれだけ智くんを欲しているか。


翔「貴方が、欲しい」


もっと貴方に触れたいんだ。

こんな事、ほんの少し前まで諦めてたんだ。

叶う筈なんて無いって。


智「っ、翔、くん」


だけど“恋人”となった今、ずっと抑えていた欲が出るのは仕方無いってものだろう?


翔「もっと、触れたい...」



もっと触れて、もっと感じて。

もっと、もっと貴方が欲しいんだ。



貴方の温もりに、包まれてみたいんだ。






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