テキストサイズ

神様の願い事

第10章 恋人の定義

《sideO》



“貴方が欲しい”

翔くんの発したその一言が、俺の心臓を大きく高鳴らせた。


智「しょ...」


高鳴らせたと言うか、ドクンと大きく波打って、止まってしまったようだ。


智「ん」


折角離した唇も、再び重ねられて。
止まってしまった心臓はその後、滞りなく大きな鐘を鳴らすんだ。


翔「もっと、触れさせて...」


呼吸の仕方も忘れてしまったかもしれない。
胸が苦しくて、頭もぼーっとして。


智「っ、は...」


どうしようかと思った時に唇は解放され、俺は漸く空気を吸い込む。
ふぅっと安心したのも束の間、今度は首に擽ったさを感じた。


智「んん」


少し身震いするような擽ったさと、安心するような温もり。
それを兼ね合わせ、翔くんは俺の首に顔を埋めている。


智「ぁ、ちょ...」


一瞬固くなった身体はすぐに力が抜け、床に倒れそうになった。


翔「ここじゃ冷たいよね」


俺の背を支え、ボソッと口を開く。


翔「ごめん、止まらなくて...」


そう言うと俺を抱き起こし、何の言葉も出せないでいる俺を見るんだ。


翔「あっち、行こう」


“あっち”と目をやるのは寝室で、俺を立ち上がらせてその場所へと誘導する。

翔くんが何を言って、俺がどう動いているか。
その状況は分かるのに俺の脳はついて行かなくて。

只促されるがままに、寝室に足を踏み込んだ。


ギシ...


座るベッドの軋む音。
それすらも、俺の鼓動を跳ねさせて。


翔「ふふ、耳」

智「え?」

翔「ピクッて。音に反応したの?」


猫耳だの尻尾だのと、冷静を装おうとしていても全く意味が無い。


智「ん...」

翔「気持ちいい?」


翔くんに撫でられた耳は、ペタンと倒れて。
心地好くて堪らないんだと示している。


智「ぁ...」


猫耳を撫でながら、さっきの擽ったい温もりをまた伝えて。


翔「我慢、しないで」


そんな事を囁くから。


智「...しなくていいの?」

翔「当たり前だよ。もう俺だって、我慢出来ないんだから」


こんな疼いた感情、閉じ込めなきゃいけないんだと思ってた。

だけどいいのか。


智「わかった... もう、我慢しない」



なんだ。


出して良かったのか。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ