神様の願い事
第10章 恋人の定義
俺の上で笑っていた智くんは、ベッドに手を投げ出し小さく唇を開いている。
智「ぁ...」
少し傾けた横顔が艶めかしくて。
智「っ、ん...」
その顔も見たいし、漏れる吐息も聞きたいしで俺は忙しいんだ。
智「翔、く...」
なのに吐息を隠そうと腕で口を覆うから。
その手を掴んで引き離す。
智「ん、ぅ」
まるで身体中が太鼓になったのかと思う程に、智くんの鼓動は俺に伝わる。
智「っ、は...」
身体中にキスを落として啄んで。
頬も、首も肩も胸も、腹まで全てを撫で回して。
智「ぁ、もぅ、だめ...」
甘い声で、そんな事を口走る。
翔「駄目...?」
智「気持ちよすぎて...」
潤んだ瞳をチラッと俺に向けて言うから。
そんな瞳を向けられちゃ俺ももう我慢なんて出来なくて。
だから俺と同じ反応を示す身体に触れようと、そっと手を伸ばした。
翔「...隠さないで」
智「だっ、て...」
でも俺が触れたのは、ふんわりとしたしなやかな毛で。
翔「なにこれ。わざとなの?」
智「なんか、恥ずかしくて…」
“急に恥ずかしくなってきた”という智くんは、後ろに生えた尻尾を器用にぐるりと回し、自分の反応する身体を隠していた。
智「っ、あ」
翔「退けてくれないんだから仕方ないでしょ?」
智「っ、そこは、駄目だっ、て...」
巻き付いた尻尾を外そうとしたけど、意外に力を込めていて。
だから“力が抜けるんだ”と言っていた箇所を撫でた。
智「ん、ぁ、あ...」
尻尾の付け根を撫でてやると、僅かに緊張を保っていたであろう身体から力が抜ける。
智「ん、ふ」
腕も尻尾もだらんとなって、耳もペタンと垂れた。
顔の筋肉まで脱力してしまった智くんは、眉を少しひそめて悩ましい瞳を俺に向けたけど。
俺の目に映るその姿は、艶かしいなんて一言では到底片付けられない。
智「ん、ぁ」
キスをしたって、唇でさえも俺の意のままに操れてしまうんだ。
智「ふ...」
熱い吐息も隠せなくて。
智「は...ぁ...」
智くんに出来るのは、只、俺を受け入れる事だけだ。