神様の願い事
第10章 恋人の定義
ほらみろ。
智「ネムイ」
智くんには余韻なんてなんのその。
二人して熱を放った後は少し気恥ずかしくて。
お互いモジモジしながら少し話をした。
でも、満足しきったからなのか話す事もそんなに無くて。
んで、智くんはとっととシャワーを浴びたんだ。
翔「疲れた? 寝てても良かったのに」
智「ん~でも、先に寝るのもなんだなかぁって」
翔「待っててくれたの?」
智「うん」
俺がシャワーから出てくると、ソファーに転がってて。
マジかもう寝たのかよとコケそうになった。
翔「じゃ、一緒に寝よ」
智「ん」
でも、寝てなかった。
待っててくれたんだ。
そこがやっぱ、人間と猫の違いなんだな。
翔「あ、耳」
智「ん?」
二人で居る時は出てるのがもはや普通だったから。
翔「な、無い...」
智「え、マジで?」
頭をくるくると撫でる智くんは、見える訳ないのに上目遣いで。
智「わ、ほんとだ」
無い事を確かめると、少し驚いた声を出した。
翔「尻尾は?」
智「どう?」
やはりこっちも無くなってる。
翔「無いね...」
智「マジで?」
やったぁと喜ぶ智くんは楽しそうだが、実のところ俺は少し残念だ。
翔「可愛かったのに...」
智「へ?」
翔「もっと、触りたかった」
智「いやいや(笑)」
“なんだそれ”と智くんは笑うけど、俺は結構本気で残念だ。
でも元に戻れないリスクを考えると、戻った事は断然良いのだけれど。
智「そんなに猫好きだった?」
翔「智くんが好きなの」
智「え」
翔「智くんだから好きなの。他は別に好きじゃない」
智「ええ?(笑)」
思わず本音が出ると、智くんは俺の前で小首を傾げる。
智「翔くんてたまにコドモみたいになるよね」
翔「悪かったねコドモで」
智「んふ?」
そのままニコリと笑って。
智「そういうの、俺だけ?」
翔「え?」
智「皆の前じゃあんまり出さないよね? お兄さんぶってるから」
翔「別にぶってなんて...」
智「ふふっ」
何が面白いんだかとか思ってたら、急にちゅっと可愛い音がして。
智「好きだよ、そういうの」
とか言い出すんだから全く。
飴と鞭? いや、只の気まぐれ?
それともやっぱり、猫なのか。