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神様の願い事

第11章 オトコの役割

《sideA》



翔ちゃんが悲壮な顔をしていた。


雅「翔ちゃん? どうかした?」


だから心配になって声をかけたのに、翔ちゃんは完全にどこかへ行っている。


雅「ねえ、翔ちゃんてば」

和「どうしたの?」

雅「や、アレ…」


ソファーに凭れて宙を見つめる。
その翔ちゃんは明らかに抜け殻で、俺の声なんて少しも聞こえちゃいないんだ。


和「翔さん?」


呼んでもビクともしないから、ニノは背後から翔ちゃんの肩に手をかけた。


翔「…ハッ」

雅「や、ハッじゃなくて」

和「どうかしたの? 何か考え事?」


振り向く翔ちゃんを覗き込むと、その膝に小さな黒猫を乗せている。


雅「あ、まだ居たんだ」

和「すっかり寝ちゃってんじゃん」


スヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てる子猫を見て言うと、翔ちゃんは目を丸くした。


翔「え、知ってたの?」

雅「へ?」

翔「ずっとここに居たの?」

雅「ずっとって言うか、レコーディング前に着いてきたんだよね」

和「うん。そっから今まで」


すると翔ちゃんはいきなり大きな溜息を吐いた。


翔「なぁぁぁんだよ~… 知ってたんなら、早く言えっての…」


呆れたような顔を俺達に向けて、“堪んねぇよ”とでも言いたそうだ。


和「知ってるって何を?」

翔「だから、この事…」


翔ちゃんがチラリと目を向けたのは膝に乗せた猫。


翔「どこ行っちゃったんだろうって、ずっと心配してたんだぞ?」

雅「へ?」

翔「松潤には? まだ言ってないの?」


なんの話を始めたのかと頭を捻っていたら、ニノが答えた。


和「…言ってないけど、潤くんも探してるの?」

翔「うん」

和「じゃあ早く教えてあげないと。ここに居るよって」

翔「そうだな」


松潤に電話をかけた翔ちゃんは、“大丈夫、見つかった”とか言い出して。


翔「なんでまた猫になっちゃったんだ…」


んで、電話を切るとまた大きな溜息を吐いて。


和「戻してあげないと」

翔「うん…」


なんだかニノまで悲壮な顔付きになってしまって。


翔「…智くん、俺が、戻すから」

「ぷぎゅっ」


急に抱きしめられた猫は苦しそうな声を出す。


雅「え、ちょっと待って。それ、リーダーなの?」



そんな俺に、ニノと翔ちゃんは呆れた眼差しを向けた。




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