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神様の願い事

第11章 オトコの役割



智「だからさ、もぅ、我慢しなくていいよ」

翔「はぁ?」

智「俺に合わせてくれてたって治らないみたいだし、それになにより、翔くんに我慢させる事の方が嫌だ…」

翔「我慢って、なにそれ」

智「本当に好きな人のところに行ってよ。俺はそっちの方がこのままよりずっといいから」

翔「ちょ、話飛び過ぎだって」


そうだ。智くんはこういう人だ。
自分の為に犠牲にならないでくれ、それなら俺が身を引くと言う人なんだ。


智「じゃ、とりあえずそういう事で」

翔「は? ちょ、待ってよ」


いくら嘘っぽく聞こえるとは言っても言い訳くらい聞いてくれたっていいだろうに。
そんな俺を置き去りに、智くんはスクッと立ち上がって寝室へと向かった。


翔「待てって…!」


その智くんの腕を思いきり掴んだ。
わざとじゃなくて、つい、だ。
俺の前から去ってしまうと思ったらいても立っても居られなくて。


ドサッ


智「ちょ、重…」


その勢いのままベッドに倒れ込み、俺は智くんの上に覆い被さった。


智「…っ、しょ…」


どうせ俺の話なんて聞いてくれやしないんだ。
それなら、このまま逃げられないように智くんを捕まえた方が早い。


智「ん、ふ」


小憎たらしい口を塞いで、俺の熱を注ぎ込んでやるんだ。


智「やめ…」


俺を好きだと、俺を抱きしめ熱い唇を押し付けてきた人が、今は俺から逃げようと藻掻いている。


智「そ、んなんしたって、治らな」


両手首を押さえ付けて唇を塞ぐ。
でもその唇は固く閉ざされて。


智「翔、く」


だったらその無防備な首に吸い付いてやる。


智「だ、めだって」


浮き出た血管に柔らかく吸い付いて、痕を残さないよう細心の注意を払って。


智「そんな事したって、意味が無いん、だ」


ごちゃごちゃと煩い口は放っておいて、汗の滲んだ鎖骨にも舌を這わせる。


智「本当に好きな人と、しなきゃ駄目だ…」


してるよ。

だからだよ。


貴方が俺の話を聞かないから、勝手に誤解して去ろうとするから。


智「ぁ、翔…」


ほら、伝わる?

俺がどんなに貴方を思っているか、どんなに大事なのか。



この熱で、感じ取ってくれる?





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