
神様の願い事
第11章 オトコの役割
くっつけた額から、俺はゆっくり離れようとした。
何故ゆっくりだったかというと、その潤んだ瞳が不思議だったからだ。
熱じゃないの? じゃあなんだ? とその瞳から目を離せないままに離れようとしたんだ。
翔「ん?」
だけど、ほんの少し後退しただけでそれ以上身体が下がらなかった。
翔「智くん? どうした…」
咄嗟という言葉が相応しいのか、智くんは俺の首根っこを徐ろに掴んだんだ。
まぁるい目をうるうるさせて、自分が引き留めた事に少し驚いた様子で。
ひとつ瞬きをしたが、小さな唇はほんの少し開き、そのまま俺の唇にくっついた。
翔「ん…」
柔らかく押し付けると、紅い舌で俺の唇をペロリと舐めて。
湿った息を微かに吐いて、甘嚙みをするんだ。
智「ちょっとだけ…」
消え入りそうな程の声でそう言うと、そっと俺の咥内に入り込みゆっくりと舌を撫でる。
智くんの舌は少し熱くて。
翔「やっぱ、熱ある…?」
智「ないよ」
囁くように答えるんだ。
智「翔くん見てたら、熱くなっただけだ…」
あ、そうだった。
いつか見た事がある、その潤んだ瞳。
智「だから、もう少しだけ…」
明らかに俺を誘っている。
この人の、スイッチの入った瞳だ。
