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神様の願い事

第11章 オトコの役割



それは“オトコ”の智くんではなく、妖艶な潤んだ瞳を携えて。


智「ん、ふ…」


口を塞いでいる為に出る、鼻から抜ける呼吸もほんのり熱い。

俺の首根っこを離さないわりに、薄く開いた瞳は凄く優しくて。

その瞳を間近で見る事の出来る俺は本当に幸せ者だ。




智「ん…」


その幸せを噛み締め、うっとりしていたら。


智「ふふ、ありがと」


きゅっと掴まれていた首元が軽くなった。


翔「え?」

智「翔くん明日も忙しいんでしょ? 俺帰るから早く寝たほうがいいよ」


スッと離れた智くんは、近すぎず遠すぎずの適度な距離を保ち俺に言い放つ。


翔「あ、帰る、の?」

智「うん。翔くんまだ風呂にも入ってないじゃん。新聞も溜まってるんでしょ?」


だからゆっくり明日に備えればいいよと、柔らかい笑みを見せた。


翔「あ…、じゃ、送ろうか?」

智「駄目だよ。酒呑んだじゃん」

翔「あ、そう、だった…」


何がどうして急にしどろもどろになったかと言うと。


智「なんか、俺みたいになってるよ?」


“急にどうしたんだ”と貴方は笑うけど、それはコッチの台詞であって。


智「そんな呑んだ?(笑)」


さっきまでの妖艶な瞳をガラリと変え、今は普段通りにまんまるい目を晒してる。


智「最近夜も遅いしさ。やっぱ疲れ溜まってんだよ」


いやいやいやいや。


翔「え、さっきの目は?」

智「へ?」


あんなに妖しく光らせといて一瞬で無垢になるとはなにごと。


智「目? って?」


なんだ? どこかにスイッチの解除ボタンでも付いてるのか。


翔「や、だから潤んでたしちょっと熱かったし」


嘘だろおい。
俺をその気にさせといて何をそんなキョトンとする事があるのか。


智「熱はないよ?」


そう言って小首を傾げるとか。
本当に分かってないのか? 只々ピュアの度が過ぎるだけなのか?


智「俺こっから帰れるから」

翔「え」

智「じゃ、おやすみ」


片足を鏡に突っ込んだ智くんは、“早く寝ろよ”と一言ほざいた。


いやバカか。


んなの、寝れる訳ねぇってハナシなんだ。





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