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神様の願い事

第11章 オトコの役割

《sideN》



雅「ちょ」

和「ん?」


相葉さんが友人夫妻にパーティーをプレゼントしたいからと言うので、お洒落なホテルの下見に来ていた。
そんな俺は、客室エリアの廊下も豪華でカッコいいなぁなんてキョロキョロしているところを相葉さんの肘で小突かれた。


雅「ちょちょちょちょ」

和「だからなに?」

雅「あれ見て」

和「アレ?」


俺の脇腹を小突きながら、相葉さんは一点を見て固まっている。
そんな相葉さんの視線の先に目をやった。


和「おーのさん…?」


その廊下に面する客室のドアから覗くのは見慣れたシルエット。
小柄で、ちんまりとしていて。


雅「だよね…?」


後ろ姿だけど、その猫背には見覚えがある。
あのふわふわした後頭部もいつも見ているから分かるんだ。


雅「え、こんなとこで何してんの…」


いつもよりちょっとお洒落にキメた大野さんは、そのドアから姿を現した。
ふんわりと優しい笑みを携えて、自分の真後ろに立つ男に振り向く。

その男も大野さんを見て笑ってるんだろう。
後ろからでも、頬の肉の盛り上がり具合で楽しいんだろうなという事が分かった。


雅「あれって客室だよね…?」


そのドアをパタンと閉め、大野さんは男と並んで廊下を進む。
俺は足が竦んでしまって動けないというのに、大野さんは軽やかにスタスタと歩いて行くんだ。


雅「ニノ、追いかけよう」


固まったままの俺の視線の先で、大野さんは忽然と消えた。
別に神隠しにあった訳じゃないんだ。只、廊下の角を曲がっただけなんだけど。


雅「ニノ?」


相葉さんは俺の腕を引っ張るけど、ちょっと待ってくれ。
足は竦むし頭はゴチャゴチャするしで体が固まっちゃったみたいだ。


和「ここ、ホテルだよね?」


漸く動いた黒目を相葉さんに向けた。


和「あの二人、部屋から出てきたよね?」


メシ屋とかなら分かるけど。
別に二人で個室から出て来たって驚かないんだけどさ。


和「なにしてたんだろ…」


まさかいい大人が二人でこんなラグジュアリーな客室に篭っておしゃべりしてましたとか。


雅「だ、大事な話があったとか、かなぁ…?」



そんな訳は無いと思うんだ。






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