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神様の願い事

第11章 オトコの役割

《sideA》



あの後、お互い仕事で一旦別れた。
追いかけようにも姿は見当たらなかったし、時既に遅しだったし。

だけど、別れた時のニノの顔が気になった。
瞳孔を開いたまま一点だけを見つめて、歩くのだって俺に手を引かれてやっとだったんだ。


雅「食べないの?」


夜中に呼び出したのも、やっぱり心配だったから。


雅「美味しいって評判なんだよ?」


目の前に出された一口サイズのハンバーグ。
それを見ているのかいないのか、口をへの字に結んで俯いている。


雅「…その調子じゃメシも食ってないんだろ」


やっぱり思った通りのテンションだ。
だから思考を凝らして今日は外に連れ出したと言うのに。


雅「著名人御用達のバーだよ? ハンバーグだってあるんだから」


カウンター内には鉄板があり、“ちょっとつまみに”なんてステーキですら出してくれる。
会員しか入れないのにわざわざ友人を通して入れてもらったんだぞ。


雅「この粗挽き。凄く美味しいらしいよ?」

和「…別にお腹すいてない」


これは重症だ。


雅「いいから食べろって。ほら、あ~ん」


無理やりその口に押し込んでやると、取り敢えずもぐもぐと大人しく食べた。


和「美味しい…」

雅「でしょ~?」


ああよかった。やっと声が和らいだ。

なんてホッとしたのも束の間、聞き慣れた声がする。


「松本くん」

潤「あれ? 来てたんだ」


その声に振り返ると、やはり松潤がそこに立ってた。
今来たばかりであろう松潤は、帽子を脱ぎながら見知らぬ男と話している。


「今日、大野くんに会ったよ」

潤「もう? 早いね」

「ふふ、松本くんの言う通り可愛い人だったよ」

潤「でしょ?」


折角尖らせた口を元に戻したのに。
またニノは眉を歪ませ二人を凝視した。


和「…似てない?」

雅「へ?」

和「あの人。昼間、おーのさんと一緒に居た人に…」


リーダーばかり見ていたからよく分からなかった。
だけどニノは、あいつのシルエットに見覚えがあると言う。


潤「次いつ会うの?」

「明後日」

潤「…優しくしてやってよ? たぶんリーダー初めてだから」

「わかってるよ(笑)」


“ちゃんとリードさせて貰うよ”なんて言う男と松潤は一緒に笑ってる。


そうか。


松潤。お前が黒幕だったか。




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