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神様の願い事

第11章 オトコの役割

《sideO》




智「あ」


ほらな。


智「ちょ…」


だから嫌だったんだ。


「…緊張してる?」

智「そりゃ…」


豪華な客室。
白を基調に造られたこの部屋はとても広い。
いわゆる“スイートルーム”とか言うやつだ。


智「…よく、緊張しませんね…」

「俺?」

智「やっぱ、慣れてるから…?」

「まぁ、こういうのは何回か経験あるけど」

智「けど?」

「でも、俺だって緊張してるよ…?」

智「そんな風には、見え…」


“緊張してるよ”と囁くこの男はスラリと背が高くて端正な顔つきをしてる。


「そうだ、この間松本くんに会ったよ」


俺がカチカチに緊張してるのを分かっていながら間を詰めて。


「“初めてだろうから優しくしてあげて”って…」

智「そんな事を…」

「本当に初めてなの?」

智「ええ、こんなのは… 思ってもみなかったですし」


もう少しでコイツの息がかかる。
そんな距離だった。


「だったら、尚更優しくしないといけないね」

智「本当わかんないんで、お願いします…」


俺の緊張を和らげようと肩に置かれた手は優しくて。


「大丈夫。俺がちゃんとリードするから」


頼もしい言葉すら吐いてくれる。


「大野くんは…、何もしなくていいよ」

智「え、そうなんですか?」

「たぶんその方が、いいんじゃないかな…?」

智「あ…、それなら、安心ですね…」


“こんなのやった事ないから”、“何もわからないから”。
そう言えば言う程にこの男は余裕を帯びて。


「だから今日はリラックスして…」


甘い雰囲気と共に、俺を見下ろす。


「今日は俺に慣れる事だけに、集中すればいい」


こんなの本当は嫌だったんだ。


「ほら、力抜いて」


断ろうって何度も思ったんだ。

だけど断れなかった。


「緊張を解いて、慣れておかないと」

智「はい」

「次が、大変だからね…」


“やっぱり断われば良かった”そんな事を思っても今更だし。


「家でも、ちゃんとシュミレーションして来るんだよ?」


こんなの一回でやればすぐ終わるのに。


智「わかりました…」


どうも下準備が必要らしい。


次に会うのは明日。


それならしっかりシュミレーションとやらをして、一発で終わらせてやろうじゃないか。





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