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神様の願い事

第11章 オトコの役割





次の日、俺は朝から智くんの予定を確保する為電話をかけた。


智『え? 今日?』


この間断られたけど、何故か不安に駆られた俺はもう一度チャレンジを試みようとしてる。


翔「そう。夜、空いてない?」

智『ん~…』


悩んでいるという事は、時間があるにはあると言う事。
全く時間が取れなければ、考える事すらせずに断る筈だ。


智『いや、やっぱ駄目だわ』

翔「忙しい?」

智『あ~、まあ、ちょっと…』

翔「そ、か」

智『ごめんね?』


この断わり方。
なんだか違和感を覚えた。


翔「ん、いいよ。じゃあまた」

智『うん。また』


プツッ、ツー


通話の途切れた音がなんだか虚しく響く。

食い下がれば約束くらい簡単に取り付けると思ったのにアッサリと断られた。
いや違うか。
俺がアッサリと諦めたんだ。


翔「はぁ…、情ねぇ…」


別に断られたって不安にならなかった。
智くんにだって付き合いとかあるだろうし。

だけどあのバカップルが。
二人して神妙な顔を晒しながら“会っといた方がいいよ”とか言うから。

だから変に不安になるんだ。


翔「このメモによると、あと数時間後…」


だけど今日は智くんが某ホテルに出没する日。

なんだか監視しているようで気分は乗らないけど。

だけど。

この不安を拭う為、俺はその場所へと乗り込む決意をした。









翔「ここなら大丈夫か…」


コソコソと廊下の隅で待機する俺はかなり怪しい。
その小さな紙には律儀に部屋番号まで書かれていて。


翔「部屋ってどういう事だよ…」


ラグジュアリーなホテルだし、豪華なレストランだってあるのに。
部屋番号が書かれているという事は、レストランでは無くその部屋に現れるということなのか。


翔「ん…?」


チン、とエレベーターの到着する音が聞こえた。
その方を覗くと、そこには明らかに見慣れた人影があった。


翔「本当に来た…」


慌てて陰に身を潜める。
そんな俺に気付かず、智くんはぽてぽてと背を丸めて歩き出す。


翔「あ…?」


その智くんが到着した部屋は、間違い無くその部屋だ。
前に佇むだけで開くそのドアは、どうも智くんが来る事を待っていたように見えた。


カチャリと開くその扉。


そこから覗くスラリとした影は、俺の知らない人物だった。


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