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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《sideS》




夜の街を運転する俺に、助手席からチラチラと視線が刺さる。
その視線を捉えてやろうとチラリと横目を向けても目は合わないんだ。
何故なら察知した智くんが素早く目を逸らすから。


翔「ふふっ、何?」

智「え?」

翔「見てたでしょ? 今」


俺を見てた。
実の所を言うと、チラチラと視線をやるのは俺ばかりなんじゃないかなとか思ってた。


智「や、久し振りだなぁと思って…」

翔「そうだね。最近一緒にならなかったからね」


だけど、智くんは俺を見てる。
見てる事がバレるのが恥ずかしいのか、そろりと視線を俺に向けてたんだ。


智「それもだけど、その横顔がさ…」

翔「え?」

智「なんか、久し振りなんだよね…」


低いトーンで静かに話す。
そんな智くんはきっと俺に見惚れているに違いない。

その智くんの顔が見たくて俺は、キュッとブレーキを踏んだ。


智「ん? どうしたの…」

翔「しっ」


顔が見たかったのに、車を素早く停車させた俺は智くんの至近距離に居た。
俺の顔が近すぎて驚く智くんの唇に人差し指をあて、出そうとする言葉を遮った。


智「え、なに? しょ…」


“しっ”なんて指で唇を封じたものだから、智くんは周りに何かあると思ったんだろう。
俺を見つめていたのに視線を外し、キョロキョロと様子を伺おうとするから。


智「ん…」


だからその頬を掴んで正面を向かせてやったんだ。


翔「黙って」


人差し指を外して素早く唇で塞ぐ。


智「だ、駄目だよ。ここ、外…」

翔「人なんか居ないよ」

智「え?」

翔「穴場なんだよ。夜景の」


俺の胸に手を添えたまま、智くんは目をキョロキョロさせて外の様子を伺った。


翔「ね?」

智「そ、そうだけど」


俺に向き直って下から見上げる目がなんとも可愛らしい。
少し顎を引いて、目だけで俺を見てるんだ。
いわゆる上目遣いと言うヤツだ。


智「夜景を、見に来たんでしょ…」


珍しく智くんが動揺を見せる。
唇を小さく動かし、ぼそぼそと話した。


翔「でも、このままじゃ降りられないでしょ?」


恥ずかしそうにしているのに、髪がもぞもぞと動いて。


翔「耳、出そうなんじゃないの…?」


俺が見つめてやると、その頭から素直な耳がぴょこっと覗いたんだ。




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