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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう




翔「ほら出た(笑)」


俺を見上げていた智くんの目は更に上を見て。


智「…翔くんのせいじゃんか」

翔「俺ぇ?」

智「近すぎんだ」


嘘ばっかり。
俺が運転していた時から髪がもぞもぞ動いていたのを俺は見逃さなかった。


翔「ほら、治してあげるから」


ギロリと睨むその顔もひとつも怖くはない。


翔「ね?」

智「ん…」


不貞腐れたような返事こそするものの、素直に俺の唇を受け入れるし。
頬を掴み直して次第に深いキスをすると、智くんだって俺の首に腕を回すんだ。


智「ぁ、ふ」


ギシッと助手席が軋む音がする。
深いキスをするには少し真っ直ぐ過ぎる体勢で、それがもどかしくて俺は、キスをしながら少しシートを倒した。


智「ん…」


実は少しビビりながら倒した。
やりすぎだと止められるんじゃないかと思ったんだ。


翔「ぁ、智くん…」


だけど止めるどころか倒れた身体に隙間が出来る事を許さず、俺にしっかり抱きついて。
上半身を完全に智くんの身体に預けても、全く嫌がらない。


智「ん、ふ…」


夢中でキスをする唇の隙間からは、熱い吐息が漏れて。
角度を変える瞬間に合う目は、麗しく潤んでいる。


智「ぁ、駄目だ…」


キスだけで呼吸の荒くなった智くんが根をあげた。


智「こんなの、逆に治まんないよ」


頬に赤みを帯びた智くんは、背から覗かせた尻尾で俺の脇腹を突く。


翔「あれ… 尻尾まで出ちゃった?」

智「ん」


尻尾だけはつんつんと動いているものの、その身体には力が篭っておらず、腕はだらんと落ちている。


翔「おかしいな…」


チラリと顔を見ると、情けなさそうに下げた眉が目に入る。
余程困っているのかとその表情に視線を移すと、俺の心臓はドクンとひとつ、鐘を鳴らした。


下げた眉に潤んだ丸い垂れ目。
頬は少し赤みが差して、小さな唇は濡れている。
それに加えてシートに凭れる気怠そうな身体。


俺を疼かせる要素を全て兼ね備えた智くんがそこに居た。


智「…折角連れて来て貰って悪いけど、今日は夜景無理だね」


片腕で顔を隠し、ふぅっと一息吐きながら言う。


智「暫く、治まりそうに無いや…」


誘っている。


腕の下から覗く紅い唇が、俺を誘ってるんだ。




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