
神様の願い事
第12章 “好き”の向こう
この後に及んで理性を保とうとするなんてこの人馬鹿かと思ったけど、馬鹿はどうやら俺の方だ。
智「っ、ぁ」
大人のくせに理性を忘れる俺が馬鹿なんだ。
智「ちょ、翔く…っ」
翔「いいから」
だって久し振りに会った智くんはチラチラと俺を見て。
ちょっと迫ると動揺して落ち着かないし。
いつも飄々としている人がそんなだから、俺のテンションも上がってしまう訳で。
智「ん、く…」
俺の頭を掴んで制止する智くんを無視して、俺は智くんの熱に貪りついた。
智「あ、ぁっ」
ここからだと智くんの顔はよく見えないけど、小刻みに震える手がどれほどの快感をもたらしているのか分かるし。
智「っ、は…」
その声の質で、胸の高ぶりも分かる。
智「ぁ、も、イ…っ」
ぐぐっと膨らむ熱で、この人の表情が手に取るように分かるんだ。
智「っ、あ、はぁ…っ」
ほら、安堵の呼吸を漏らした。
翔「ふふ、ごめんね? こんなとこで」
智「…本当だよ、もぅ…」
熱の冷めやらぬ細めた瞳で俺をチラッと見るその仕草に、俺がどれほど心を踊らせてるか知らないだろう。
翔「でもこれで、治ったでしょ…」
熱を吐き出して尚、紅い唇を震わせて。
翔「あれ…?」
潤む目はそのままに、頬も未だ高揚させて。
翔「なんで引っ込んで無いの…」
確かにイッた筈なのに、まだこれからだぞとでも言うようなその姿。
智「…治るかバカ」
翔「え?」
智「だから、逆効果なんだよ」
気怠そうなその身体をゆっくりと起こし、智くんは俺をチラリと見上げた。
智「俺だけで満足する訳無いじゃん」
翔「へ?」
舐めるように、俺を見上げて。
智「俺だって、翔くんに触れたいんだよ…」
まぁるい目を潤ませて、可愛く頬を赤らめてたと思ったら。
智「車出せる? 家、行こう」
急に舌舐めずりをした。
動揺する智くんに対して主導権を完全に握ったと思っていた。
なのに、俺はいとも簡単に妖しく光るその瞳に飲み込まれてしまうんだ。
