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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《sideS》




さっきの舌舐めずりはどうした。完全に寝とるやないか。


翔「智くん…、智くん着いたよ」


隣でスヤスヤと寝息を立てていた智くんからは、猫耳も尻尾もすっかり消え失せて。


智「ん…?」

翔「着いたよ。家」


“家?”なんて目を擦りながら車外を見回すこの人はすっかり熱が冷めていた。


智「あ…、家、か」

翔「そうなんだけど、どうする? 帰る?」

智「え?」

翔「猫化も引っ込んだみたいだし、貴方明日仕事でしょ?」


え。なにその目。
眠そうに細めていた目をしっかり開いて、下から覗き込むように俺を見た。


智「…帰った方がいい?」


その寝起きの声は少し掠れて、どこか寂しそうに聞こえる。


翔「…いや、そう言う事じゃ無いけど。その状態なら問題無いだろうから…、疲れてるんならって、思って…」


真っ直ぐに俺を見上げて寂しそうな顔をする。
そんな目で見られたら、俺がしどろもどろになるのは当たり前で。


智「時間変更になったんだよ。昼からになった」

翔「あ、なんだ。そっか」

智「だから家、行っていい? 翔くんが迷惑なら帰るけど…」


それで目線を外して伏せ目がちになったりして。


翔「迷惑な訳無いでしょ」


コレわざとなのか?


智「ふふ、よかった」

翔「俺もだよ。行こう?」

智「うん」


寂しそうな顔をパァっと明るくして、少し照れたように笑う。
それがまた無邪気というか無垢というか。


翔「眠くないの?」

智「ん、覚めた」


ぽてぽてと俺の後ろを着いてくる智くんに問いかけると、子供のように目を擦っているのにそんな返事をして。


智「喉乾いたな…」


なのに急に掠れた声でトーンを落とすのヤメロ。


智「ふぅ…、ちょっと暑いな、このエレベーター…」


俺の背後でボソボソと放つその声がヤバい。


急にアダルトなんだ。


貴方のその声が、疼くんだよ。





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