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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《sideO》



智「やっべ…」

「耳、出かけとるぞ?」

智「!?」

「尻尾も」

智「じっ、じいちゃん!?」


あっという間にムラムラした。
翔くんの白い肌に吸い付いたら優しい香りがして。
頭がモゾモゾしてきたから、バレないようにと急いで翔くんを風呂に追いやったんだ。


「我慢する事なかろう」

智「てかなんでココに」

「ああ大丈夫。“翔くん”にはこの声は聞こえん」


それだったら俺の独り言みたいじゃねえか。
逆にヤバい奴だぞ。


智「…その鏡にも来れるの?」

「ん? みたい」

智「へぇ」

「じゃなくて、何故我慢する事があるんじゃ。オヌシ達は恋人じゃろう?」

智「だって」


毎日忙しそうだし、夜だっていつも遅そうだし。
今日は久々に会ったからって気付いたらちょっと遠いポイントにいたし。


智「疲れてんじゃないかなって思ってさ」

「疲れを取ってやればいいじゃろう。オヌシは恋人なんじゃから」


だから早く寝かせてやろうと我慢したんじゃないか。


「うーん。オヌシはちょっと的が外れとる所があるからのぅ…」

智「はい?」

「まぁ、自分に正直になれという事じゃ」

智「はぁ」

「“翔くん”も猫化を治してやると言ってるみたいだし」

智「あ、うん」

「それなら早く治してもらえ」

智「へ」

「そろそろ迎えに行かなきゃならんのでな」

智「あ、死んじゃうの?」

「そういう言い方はやめなさい」

智「ごめ」

「ワシが怒られちゃうじゃんか」

智「なんだよ自分の為かよ」

「オヌシの為じゃ」

智「へ?」

「オヌシと、“翔くん”には幸せになってもらいたいんじゃ」

智「…どうして?」

「…ワシの、サイドストーリーみたいなもんじゃよ」


どうやら自分が生きている間に実現出来なかった事を、俺に感じてもらいたいと。

それがじいちゃんのサイドストーリーになると言うんだ。


「お前さんを猫にしたのも全てはその為じゃ」

智「え?」

「それが、ワシとあいつの願いなんじゃよ」


お化けのじいちゃんには願いがあったようで。

その願いを叶えるのがどうやら俺らしい。



よく分からないけど、俺が幸せになればそれが叶うとじいちゃんは言ったんだ。






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