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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう




視界がひっくり返って“あれれ?”なんて思う暇も無かった。


翔「ん…」


じんわりと暖かくなる俺の首元。
甘い香りが辺りを漂い、柔らかい髪が頬を擽る。


智「優しい匂いがする…」


鼻を俺の首に埋ずめ、智くんはクンクンと鼻を鳴らした。


智「脱がせていいよね?」

翔「え…」


おもむろに顔を上げると、俺をチラリと見てそんな事を言うし。


翔「大丈夫、自分で脱ぐよ」


普段わざわざ聞かないような事を聞いてくるから、なんだか少し擽ったかった。


智「いいから」

翔「や、ちょ…」


俺の服に手をかける智くんを制すると、智くんはきょとんとするんだ。


智「…恥ずかしいの?」

翔「いや、つか」

智「や、恥ずかしいんでしょ?」


きょとんとした顔は笑みに変わって。


智「初めてでも無いのに…?」


笑みというか、ニヤリとした。


翔「別に恥ずかしい訳じゃ」

智「そ?」

翔「そう、だよ」


なんだかちょっと見栄を張りたくなって。


智「だったら大人しくしてよ。俺が脱がせてあげる」

翔「や、だから…」


これはバレちゃうぞ。笑われちゃうぞと俺は呆れたフリをした。
呆れたように、目を瞑ったんだ。


翔「あ…?」


するとその隙をついて、智くんは俺の両手を取り上げた。


智「恥ずかしくないんなら、大人しく出来るでしょ?」

翔「はぁ、わかったよ…」


まるでワガママを言う子供を扱うように。
大人な俺を演出したんだ。


智「ふふっ」


ところが呆れた芝居をしたと言うのに智くんは笑っていて。


智「コッチ見れないくせに…」


取り上げた両手をベッドに張り付け、俺の喉仏に吸い付いたんだ。






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