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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《sideS》



青ざめた顔に玉のような汗が流れる。
そんな智くんは、僅かに唇を動かして“幸せだよ”と笑った。


智「幸せだよ、翔くん…」


冷や汗で頬も冷たくなっているというのに。


翔「俺もだよ…」


なのに俺が髪を撫でてやると擽ったそうに笑うんだ。


智「ふふっ、不思議だな…」

翔「不思議?」

智「だって、俺の中に翔くんがいる…」


後ろはギチギチと悲鳴を上げているのに、どことなくぽーっとした表情で。


智「こんなに、嬉しい事はないよ」


幸せを噛み締めてるんだ。


智「ふふ、俺、幸せだなぁ…」


ぎゅっと俺を抱きしめて、胸に顔を擦り付けて喜んでる。
それが俺はとても嬉しくて。


翔「俺も。凄く幸せ…」


だって予想を遥かに超えた。
まさかこれ程の顔を見せてくれるなんて思いもしなかった。


翔「ひとつになれる事がこんなに嬉しいなんて思わなかった…」

智「うん…」


俺と繋がる事で、こんなにも喜んでくれるなんて。


智「はぁ…、幸せだな…」


何度も口に出してしまう程の事だなんて。


翔「汗、凄いよ…」


大粒の汗も全く気に止めなくて。


智「あ…、ふふ、ちょっと緊張した…」

翔「ちょっと?」

智「う~ん、結構…?」

翔「ははっ、だろうね」


今頃気付いて額の汗を指の腹で拭うんだ。

だから俺はその仕草があんまり愛おしくて、その光る指先を俺の手に絡めとった。


智「ふふ、びしょびしょ…」


絡めとった指に俺の指も絡めて。
愛おしく、いやらしく。
するとその触れ方に反応した智くんは笑顔を封じて。


智「ん…」


そっと唇を塞ぐと穏やかに息を漏らした。


智「ふ…」


この手でまさぐるように、撫で回すように光る汗を拭い取ってやると、そのキスも段々と激しくなって。


智「ん、ぁ…」


甘い息が漏れ出す。


智「ぁ、しょう、く…」


口内も熱くなれば、冷えた汗にも熱が篭もり。

湯気が立ちそうな程だ。


翔「抱いて、いい…?」


その色香の交じる湯気に誘われ、俺の血液は沸騰する。


智「いい、よ…」


この後に及んで“色香”という秘薬まで仕込んで俺をどうするつもりなのか。


その言葉だけで、俺の脳は溶けてしまいそうだというのに。





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