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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう




智「ぅ…」


ほんの少し腰を引いただけで僅かに声が漏れた。


翔「ゆっくりするから…」

智「ん…」


その圧迫に耐える姿がせつなくて。
頭をふわりと包んでやった。


智「っ…」


引いた腰をゆっくり押し込めると、今度は微かな息が。


翔「大丈夫、我慢しなくていいよ…」

智「う、ん」


きゅっと目を瞑り、唇を固く結んで。
必死で俺にしがみついて苦しそうな声が漏れないようにと我慢してる。

そんなの漏れたって、嫌な気分になんてなる訳ないのに。


智「っく…」

翔「ほら、大丈夫だから… 口開いて、ちゃんと呼吸しなきゃ…」


そう言って胸を撫でてやると、閉じた瞼が緩んで。


智「辛い、訳じゃないんだよ…」

翔「うん」

智「只、心配するかなと思って…」

翔「そんなの…」


俺が心配するかなと思ったんだと。
だから自分の事は放置で我慢したんだ。


翔「…我慢してたら逆に心配するでしょ」

智「そ、か」

翔「そうだよ…」


その気持ちが嬉しくて。
この人の俺を想う心が嬉しくて。


翔「わかった? 我慢、しないでね?」

智「うん、ふふ…」


目をまるくして情けない顔で言ってやると、智くんは観念したように笑うんだ。

少しでも、少しでも楽に。

少しでも、和らいだ表情でいられるように。


智「ん、ふ」


自分をしっかりと押し込めたまま、笑みを零した頬と耳にキスをする。


智「ぁ…」


慣れるまで、焦らない。
押し込めたもので押し広げるようにゆっくりと腰を回し、血管の浮き出た首筋に吸い付いた。


智「っ、は」


ここを柔らかく吸ってやると智くんは目を細めるんだ。
いつもうっとりとして、凄く気持ちよさそうにするから。


智「はぁ…」


だから少しでも和らげる場所を。

俺が触れて、喜ぶ箇所を。


智「翔、く…」


消え入りそうな声で俺を呼ぶその声。

その安心しきった声が聞きたくて。


翔「はぁ、好きだよ、智くん…」

智「ん…」


何度でも聞きたい。


智「俺もだよ、翔くん…」


俺の胸が騒ぐその声。


もっと聞かせて。






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