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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《side爺》



智「おまたせ、翔くん…」

翔「智く…」


もう開ける瞼すらも重そうで、見えているのかいないのか薄目で空を見上げる。


智「迎えに来たよ」

翔「あ、はは、やった…」


多分見えていないのだろう。
その見上げた視線は俺とは明後日の方向に向いていて、それなのに健気にガッツポーズなんてしてる。


智「喜んじゃ駄目だよ。悲しむ人が沢山いるんだから(笑)」

翔「大往生だよ。もう十分でしょ…」


空を彷徨う視線を閉じて、翔くんは穏やかな笑みを浮かべる。
見えてはいない筈なのにその手は俺に縋るように伸びてきた。


翔「あ…、智くんだ…」


その手をそっと包んでやると、翔くんは更に嬉しそうな笑みになって。


智「ふふ、わかる?」

翔「うん、智くんの手だよ…」

智「うん…」


翔くんからは白い玉のような光がふわふわと浮き上がっていて。
付かず離れず翔くんに寄り添っている。


翔「…こんなに待ったんだよ? 早く、連れてってよ…」

智「ん…」


包んでいた手をグッと掴んで引き寄せると、その白い光は翔くんからポンっと離れた。


智「じゃあ、いこっか」

翔「ふふ、うん」


現世に何も思い残すことは無いとでもいうような満足しきった顔。
やっと俺に触れて嬉しいんだとでもいうような幸せそうな顔。

そんな顔を晒して俺に誘われていく。


智「…ちょっと、寄り道してく?」

翔「寄り道?」


アイツらを見たらどんな反応を示すかな。


智「ふふ、見せたいものがあるんだ」

翔「見せたいもの?」


喜んでくれるかな。

それとも、そんなのしなくたって俺は幸せだよとか言いながらお説教されちゃうかな。


翔「なんかこういう時って、とんでもないもの持ってきたりすんだよな…(笑)」


絶対微笑ましいと思うんだけど。


なんだか後者が濃厚な気がしてきたな。







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