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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《sideS》



浅い息を吐く智くんの上から降り、俺は隣にゴロンと転がった。


翔「はぁ…、ちょっと待ってね、拭くから」

智「うん…」


顔を腕で覆って小さく唇を開き呼吸を漏らす。
そんな姿が未だにドキッとして。
覆いかぶさるように智くんの上を横切り、ティッシュケースに腕を伸ばした。


翔「あれ…」

智「ん…?」

翔「イッた…?」

智「へ?」


その時にチラリと見やった薄く付いた智くんの腹筋。
そこは汗でいやらしく光り、そのいやらさしさがなんとも美しかった。


翔「…や、汚れてなくない?」

智「え?」

翔「出た?」


自分の腹をペタペタと触る智くんは不思議そうな顔をした。


智「あれ…」


ついにはぴょこっと起き上がってシーツまでペタペタと触っている。


翔「え、まさか」

智「ん?」

翔「イッたふりとか」

智「へ」

翔「俺に気を遣って…」

智「いやいやいや」


確かに智くんの中はビクビクと痙攣をし、まさにイッた時のそれだと思ったんだけど。
だけど智くんの腹にはそんな痕跡は無いんだ。


智「よくわかんないけど… 確かにイッ…た、と、思う…」

翔「わからない?」

智「だってなんか、今までのと感覚が違うっていうか」

翔「気持ちよかった…?」


俺がその瞳を覗き込んで聞くと、智くんは恥ずかしそうにそっぽを向いて。


智「そ…っ、んな事聞くなってば」

翔「だって教えてくれないとわかんないでしょ」

智「俺だってわかんないよそんなの」


むう。腑に落ちん。


智「わ…っ?」


だからとりあえず押し倒して智くんの真上からしっかりと顔を見る事にした。


智「な、なに」

翔「嘘ついてないかなぁって」

智「つ、ついてないよ」

翔「ほんと?」

智「ほっ、ほんと」


滑らかに出てこない話し方が気になる。
だけどこの人いつもこんなだし。


翔「…どっちにしろ、出さなきゃ身体に悪いよね」

智「へっ?」

翔「イッたにしろイッてないにしろ、溜まってるモンは出さなきゃね」

智「え、ちょ、しょ」


なんだって俺はこんなに元気なのか。

大人ならこの場合“余韻”というものを十分に味わうべきものなのに。


だけど仕方がない。


俺には智くんを解放してあげなきゃという使命があるんだから。






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