テキストサイズ

神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《side爺》
※ややこしいので爺達の会話は『』とします。



翔『…どこココ』

智『見覚えない?』

翔『あ! 俺が昔住んでたとこ!』

智『そ』


時空を彷徨い俺達は漸くこの時代に辿り着いた。
手を繋いでふわふわと空を舞い、まるでデートのようだ。


翔『てかそんな遠くないのになんでこんな時間掛かったの…』

智『鏡の調子が悪くて』


“鏡?”と翔くんはキョトンとしたけど次の瞬間目ん玉を見開いた。


翔『えっ!?』

智『ん?』

翔『あれ智くんじゃん!? 若い時のっ』


目をぱちくりしたり身を乗り出したり目を擦ったりと翔くんはクソ忙しそうだ。


翔『アイツ誰だよ…』

智『知らない?』

翔『つか、裸…って、え…』

智『いやいや落ち込まないで、よく見て(笑)』


折角喜ばせようと思ってたのにもう肩を落としてるし。


翔『…っ、お、俺ぇっ!?』

智『そだよ(笑)』

翔『え、なになにどういう事? なんであんなところに俺達がってなんか若いしはぁ?』

智『…説明するから落ち着いて』


とりあえず裸の俺達を余所目にまず翔くんに説明をする事にした。猫化を省いて。


智『て、わけ』

翔『…いまいちよくわかんないけど』


あまり伝わらなかった。


翔『智くんの死に際に言った俺の一言、覚えててくれたんだ…?』

智『まぁ忘れないよ。結構根に持ってるからね』

翔『え』

智『だって笑ってたじゃん。人が死にかけてるってのにさ』

翔『や! あれは!』

智『“無駄な時間を過ごしたね”なんてさぁ。死にかけてるってのに“無駄”って。グサっときたよ俺は』

翔『いやいやだってそれはそんな意味じゃなくて』

智『心臓も弱ってたし多分それでトドメさされたんだなきっと』

翔『っ、さ、さと』


ああ楽しい。
翔くんと手を繋いで笑い合って。
まぁ笑ってるのは俺だけなんだけど。
だけどたったこれだけの事がこんなにも楽しいなんて。


智『ふふ、冗談だよ』

翔『へぇ…?』


やっと繋げた。


智『俺も、勿体なかったなぁって後悔した…』


やっと触れられたんだ。


智『だから、願いを叶えたくなっちゃったんだよね』

翔『願い…?』

智『そ。俺のね』


誰に言われた訳でもやらされた訳でもなくて。


これは只の、俺の些細な願いだったんだ。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ