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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう



智『ふふ、見て。幸せそうでしょ』


下界を指差すと、翔くんもチラリと目をやって。


翔『ほんとだ…』


ポカンとした。


翔『…汗だくで裸じゃん? コレ、なにやってたの…?』

智『さあ?』


すっとぼけても目敏い翔くんはすぐに証拠を見つけ出す。
ベッドに精根尽き果て転がる若い二人の隣に転がっているモノを。


翔『ローショ…っ!!』

智『じゅうぶん愛し合ったみたいだねぇ』


ああよかった。まだヤッてなかったらどうしようかと実は気が気じゃ無かったんだ。


智『だから鏡の魔力も落ちてたんだね』

翔『あぁ、もう必要なくなったからってこと?』

智『うん』

翔『けどよくそんな呪文知ってたね…』


なんだか翔くんはこちらをジロリと見るけど。


翔『俺も鏡を操るヤツTVで見た事あったけど、あれ確か智くんと見てたんだよなぁ…。猫になるヤツ』

智『どき』

翔『え?』

智『いやなんも』

翔『ふぅん…?』

智『あっほら! 俺達がなんかしゃべってるよ! ラブラブな会話じゃないかなっ聞いてみようよっ』

翔『急に喋り出したな…(笑)』


やっば。そうだった翔くんも知ってたんだあの魔術。
勿論ヤラセだと思って信じなかったけど、なんかオバケになって念を込めたら使えてしまった。
そんな単純な魔術まがいの呪文。

だから本当に猫になっちゃうなんて思わなくて解く呪文もしっかり聞いてなかったというツメの甘さ。

だから戻ってくれて本当に助かった。


智『ほ、ほら、聞こえるでしょ?』

翔『ふふ、うん』


勘が鋭いからまさかバレるんじゃと思ったけど翔くんは既に下界に集中していて。
満面の笑顔で若い俺達を見てる。


翔『いやぁ、こんな事になれるとはねぇ…』

智『いいね』

翔『うん。俺達が羨ましいよ(笑)』


未だベッドから重い身体を起こせないでいるようだけど、抱き合ってるその姿はとても幸せそうで。

見てるこっちまで幸せになるんだ。

まるで俺達の過去がそうであったかのような錯覚さえ起こしそうで。


智『今からでも遅くないよ』

翔『ふふ、そうだね…』


俺達だってまだ幸せになる余力は十分にあるんだ。


俺達はまだ、これからだ。






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