
神様の願い事
第12章 “好き”の向こう
翔『…ところでさ。俺なんなの?』
智『へ?』
翔『いやずっと思ってたんだけどね? なんか俺白いなぁって。光ってんのかなぁって思ってはいたんだけどね?』
智『あぁ』
鏡を消す呪文を唱えに来た翔くんは、その鏡に写る姿を見て俺に問いかけた。
智『“ひとだま”』
翔『はい?』
智『だから“魂”だよ』
鏡にオバケが写るってのもおかしな話だけどまぁこれは俺が作り出した魔力の塊で。
翔『…じゃあやっぱ、その智くんの肩あたりでフワフワしてんのが俺なの?』
智『うん』
鏡に写る翔くんは白くてまんまるで。俺の肩にちょこんと乗っていた。
翔『なんで!』
智『へ?』
翔『智くんはちゃんと人の姿をしてるのになんで俺は玉なのっ!?』
智『玉って(笑)』
まるでゴルフボールみたいだった。
智『そりゃ俺は結構時間経ってるしいろんなチカラが身に付いたからさ』
翔『俺は?』
智『や、だから。まだ死にたてでしょ?』
翔『死にたてって』
-若者たち-
智「ん…?」
翔「どうかした?」
智「や、なんか気配が」
翔「気配?」
智「う~ん…?」
-爺たち-
智『あっほら、騒ぐと気づかれちゃう。ほら俺、そういうの鋭いから』
翔『あぁ、野生の勘ってやつね』
翔くんは腑に落ちないみたいだけど若い俺達に水をさすのもなんだしなぁと呼吸を整え始めた。
智『よろしくお願いします』
翔『はい』
すっと息を吸い込んで翔くんは目を閉じる。
そして手を鏡にかざしながら一気に呪文を唱えた。
智『わ…』
翔『…どう?』
智『凄い。消えた…』
翔『フッ』
ゴルフボールの翔くんがドヤ顔を決めていた。
翔『…しかし貴方凄いよね』
智『俺なんもやってないよ?』
翔『鏡じゃなくて』
ドヤ顔を決めた翔くんはマジマジと俺を見て。
翔『よくこんなゴルフボールと話せるよね。尊敬するわ』
智『んふ』
だって見えてるからね。
翔くんにはひとだまにしか見えてなくても俺には見えてるんだ。
笑ってる顔も、ドヤ顔してる顔も。
愛おしそうに俺を見る瞳だってハッキリとわかる。
目に見える姿形なんてなんのその。
俺の心に翔くんの顔は全て刻まれてるんだ。
だっていつもどんな時も、翔くんを見てたんだから。
