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神様の願い事

第13章 神様の願い事

《side爺》



翔『思ってたのと違う』


天に昇る道中、翔くんがボソッと口を開いた。


智『まだ日が浅いだけだって。そのうち出来るようになるから』

翔『だって』


まだ死んで数日。
ふわふわと浮かぶ翔くんはたぶん口を尖らせてる。


翔『こんなのオタマジャクシじゃん』

智『…ぷぷっ』


鏡の魔力が弱って天に昇るのに時間が掛かって。
その間に翔くんは少し進化したんだ。


翔『玉から手と足だけ出るってなんなのコレ…』

智『大丈夫、顔も出てるよ…っ、ぷ』

翔『笑ってるやん』


小さな玉からこれまた小さい手と足をぴょこっと生やし、翔くんは不思議な形をしていた。


智『心配しなくても大丈夫だって。天に昇ればちゃんと好きな形になれるから』

翔『好きな形って?』

智『だからたとえば…』


道中する事もないし、暇つぶしがてら俺は念を込めた。


智『これとか』

翔『あっ 榎本径!』

智『これとか』

翔『怪物くんっ』

智『これ』

翔『魔王だ…』


目を輝かせて姿を変幻自在に操る俺を見てる。


智『どれがいい?』

翔『え?』

智『せっかくだから好きなの選んで?』

翔『じゃあ…』


と言われて変身したのは“猫化”を強いられた若い俺。


智『これがいいの?』

翔『うっ、うん』


俺の頭にはちょこんと耳が乗って、後ろには黒い尻尾が生えた。


翔『ほんとだ』

智『ん?』

翔『すっごい似合ってる』

智『ええ?』

翔『可愛い……』


まるで乙女のように両手を前に合わせて。


智『ナニそれ(笑)』

翔『だって可愛いから』


俺から言わせりゃそんな翔くんの方が何倍も可愛いんだけど。


智『翔くんも似合うと思うよ?』

翔『何が?』

智『猫耳。で、翔くんは白猫かな』

翔『白?』

智『だって翔くんのウリは色白美肌でしょ?』

翔『は?』


“ウリにした覚えは無いんだけど”と照れくさそうに笑うけど。

結構本気で思ってた。

サラサラな髪に白い肌が凄く爽やかで。

あの髪撫でたいな、あの首触りたいななんて。


智『早く修行してよね』

翔『へ?』

智『そんなオタマジャクシじゃ細かいとこまで触れないじゃん』

翔『え』



翔くんの姿が戻ったらまず何しよう。


とりあえずは、思いっきり抱き締めたいな。





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