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神様の願い事

第13章 神様の願い事

《sideO》



翔「神様に感謝だね」


微笑む翔くんは俺の部屋にいる。


智「結局神様なんだ?」

翔「やっぱそうでしょ」


鏡が消失した事で便利だった移動ツールも消え、最近は翔くんが俺の家に来るようになった。


翔「なぁんか不思議でさぁ。見た事あるような…いや無いんだけど」

智「顔知らないからなぁ」

翔「そっか、鏡から声聞こえてくるって言ってたもんね」

智「今も聞こえてるよ?」

翔「え」

智「ほらあっち。バスルームから聞こえない? うめき声」

翔「う、うめき声…?」


チラリと瞳をバスルームに向けた。
それを見た翔くんは一気に顔が固まるんだ。


智「やっぱ悪霊だったのかなぁ…。成仏してないのかも。ちょっと見てきてよ」

翔「えっ」

智「だぁって俺が行っても顔わかんないしさ。翔くん知ってるでしょ?」

翔「や、でも」

智「ほら早く。俺とり憑かれちゃうかもじゃん」

翔「ちょ、ちょちょちょ」


目をまるくして焦り出す翔くんの背を押す。
グイグイ押してバスルームの前まで連れて行くんだけど、その道中もドタバタと騒がしくて。


智「見て、鏡。おれ怖い」


背にぎゅっとしがみついて翔くんを見上げた。


翔「よ、よし」

智「いける?」

翔「ちょ、手 握ってて」

智「うん」


翔くんのビビってるとことか焦ってるとことか。
そんなのが可愛いから見たかっただけなんだけど、珍しく“いける”とか言い出した。


翔「あ、開けるよ?」

智「気をつけてね…」


ぎゅっと握る翔くんの手は汗ばんでる。
俺が珍しく怖がったもんだから、守ってやらなきゃと思ってくれたのかな。


智「ふふ…」

翔「ひぃっ」

智「どうしたの?」

翔「な、なんか声が」


それ俺だな。


智「やっぱ居るのかなぁ…」


俺の前で慎重にバスルームを見渡す。
その後ろで俺はシャワーのコックを捻った。


翔「うわぁぁぁっ」


明らかにちょっと飛んだ。


翔「シャワーが勝手に…っ」


俺の捻ったシャワーは翔くんを狙い撃ちにした。
サラサラな髪に強めのシャワーが当たって、あっという間に翔くんはズブ濡れだ。


智「翔くん…」


それを見てたら、何故か俺の足は一歩進んで。


翔「さ、智くん…?」


両手が俺の意思を無視して、翔くんの首に伸びたんだ。




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