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神様の願い事

第13章 神様の願い事




翔「さ、智くん…」


ゆっくりと伸びる俺の両手。それは俺の意思を含まない。


翔「どうしたの、ぼーっとして!」


瞬きすら出来ずに、俺の足は更に歩み寄る。


翔「しっかりして! 出よう!?」


髪から水滴を滴らせる。
そんな翔くんはシャツも透けて、うっすらと筋肉が浮かび上がっていた。


翔「智く…っ」


伸ばした両手はとうとう翔くんに辿り着いた。
その両手で翔くんの首をきゅっと掴むと、翔くんが息を呑んだのがわかる。


翔「だ、駄目だ落ち着いて…」


首を掴まれた翔くんは目ん玉をひん剥いて。


翔「霊が憑いたかもしれない」

智「ふふ…」

翔「大丈夫だから、手を…」


翔くんは小刻みに震える手で、俺の片方の手を覆った。


翔「そう、ゆっくり…」


掴まれた片手は翔くんの首からゆっくりと剥がされて。
露わになった首筋の血管が、絞められたせいか少し浮いていた。


翔「ここヤバいよ、出よう」


シャワーで音が掻き消される中、俺は瞬きすら出来なかった。
滴る水滴に、透けるシャツ。
“猫化”は確かに治った筈なのに、まるで目の前にマタタビをぶら下げられてる気分だ。


翔「行こう」


それでも俺の片手は未だ翔くんの首を掴んでいて。
足だって微動だにしなかった。


翔「…智くん?」


剥がされた手も未だ翔くんに掴まれていて。
その手をくるりと翻し、自ら翔くんの手を握り返した。


翔「え…」


手をきゅっと握ると俺の足は漸く動いて。
掴んだ首を引き寄せその首筋にキスをした。


翔「ちょ、さと」


濡れた首筋は色っぽく艶めいて。
舐めるように、柔らかく吸い付いた。


智「嘘だよ」

翔「え?」

智「オバケなんて嘘…」


濡れたシャツの隙間を掻い潜って直に翔くんの肌を触る。
しっとりとして、すべすべで。


翔「でもシャワーが勝手に…」

智「それ俺」

翔「…は?」


心臓あたりに辿り着くと、その鼓動は高鳴っていて。


翔「マジかよ…」


ふぅっと息を吐く翔くんに溜息は吐かせない。


翔「ん、さと」


有無を言わせず唇を塞いで、その鼓動と温もりを独り占めするんだ。






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