テキストサイズ

神様の願い事

第13章 神様の願い事

《side爺》



ちゅっ♡


クソ可愛いキスをした。
俺達の初めての、とてつもなく可愛いキスを。


智『ん? ふふ…』


頬を染める翔くんは照れている。
それが可愛くて堪らなくて、もう一度そっと触れるだけのキス。


翔『そ、それお腹だし』

智『そうなの?』


玉から手と足と顔だけを生やした小さな翔くん。
どこにキスをするのが妥当かと考えた挙句、俺は玉の部分にキスをした。


智『でも顔ちっちゃいしなぁ』


顔じゃキスどころか食っちゃいそうで。
どうしたものかと首を捻っていたら目が霞んできた。


ぼわん


智『ん?』


ぼわんぼわん


智『んん?』


急に霧がかかったようで。
目を擦っていたら煙に巻かれた翔くんが現れた。


翔『へ…』


そこから出てきた翔くんは等身大で。


翔『さっ…、智くんっ』


俺は思わず翔くんを見上げたんだ。


翔『この上目遣い…、ってことは』


見上げてるだけなんだけど翔くんには上目遣いに見えてたのか、なんてぼーっと思っていたら。


智『むふっ』


久し振りに感じる力強さで俺を引き寄せた。


智『ちょ、息できな』

翔『死んでるでしょ!』

智『あ、そか』


むぎゅむぎゅと俺を抱き締める翔くんは馬鹿力で。
その強さが懐かしくてあったかくて、俺も思わず応戦した。


翔『ぐふっ』

智『ふふ』

翔『苦し、し、死ぬ』

智『もう死んでる』

翔『あ』


俺のキスで目覚める翔くんはまるでお伽噺のヒロイン。


智『眠り姫みたい』


翔くんの胸に顔を埋めたままボソッと口走ったら。


翔『それは貴方でしょ? いつも楽屋でそうだったよ』


俺のだらしない寝顔を見てそんな事を思っていたとは。


翔『ふふ、やっぱ小さくて可愛いな…』


小柄な俺を胸に納め頭をぽんぽんする。
その顔は明らかにデレていて。


智『ふふ、じいちゃんがデレてる』

翔『え』

智『ヨボヨボのままだよ翔くん(笑)』


只見上げてるだけなのに“上目遣い”だし居眠りしてるだけなのに“眠り姫”だし。

そのうち“妖精”とか言い出すんじゃないだろうか。


智『俺のこと大好きなんだね』

翔『わかってくれた?』

智『ふふ、うん』


やっと翔くんに包まれた。


今が人生で一番の、幸せの時。


死んでるけどね。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ