テキストサイズ

神様の願い事

第13章 神様の願い事

《side爺》



智『ねぇまだ?』

翔『まだ』


翔くんは俺に背を向けなにやら気張っている。


智『もぅいいじゃん。早くちゅーしようよ』

翔『ちゅー?』

智『そう。チュウ』


振り向く翔くんに唇を突き出し俺はキスを迫る。
なのにその俺の顔面を片手で制した。


翔『だっ、だめだめ! 誘惑しないで!』


不貞腐れる俺を余所目に翔くんはまたもや背を向け。


智『俺がじいちゃんになろうか?』

翔『はぁ?』


念を込めてもなかなか思い通りの姿になれず苦戦しているから申し出たのに。


翔『ジジイ同士のキスなんて誰が見たいんだよ気持ちわりぃ』

智『ひど』


だってこのままじゃ駄目だと言うしキスはずっとお預けだし。


智『雑念が多いんだよ翔くんは。無になって』

翔『だったら誘惑しないでよっ』

智『してないし』

翔『してるよっ。ずっと尻尾でツンツンしてるっ』

智『あら』


猫化した俺になれと言うからなってやったのに。


智『コントロールムズいんだよ』

翔『俺だって早くキスしたいんだから大人しくしててよ…』


がっくりと肩を落とす翔くんは何やら薄く光りだした。


智『俺とちゅーしたいの?』

翔『そりゃ…』


光りはどんどん強くなって。
眩く光って目が眩んだ隙にその頬にキスをした。


翔『あっ』

智『んふ』

翔『まだだって言ったでしょう?』

智『だって… ん?』


目の眩むような光りは瞬間スッと消え、俺がキスした頬はすべすべだった。


智『あれ… 翔くん?』

翔『へ?』


手を見てみろと翔くんの手を掴み目の前に差し出した。
皺くちゃだった手が真っ白すべすべで。


智『なんなの翔くん。俺のキスが無いと進化しないじゃん(笑)』

翔『ほんとだ…』


クスクスと笑う翔くんはこちらを見ると俺の肩をしっかりと掴んで。


翔『待たせたね…』

智『…ホントだよ。待ちくたびれた』

翔『ははっ、ジジイになるまで待たせやがってって?』

智『挙句死んでるし』


冗談じゃないんだぞ。本当に待ったんだ。


翔『遅くなってごめんね』


低い声を辺りに響かせ翔くんはふわりと笑う。


翔『もう待たせないよ…』


同じようにふわりと俺の唇に。

二度目のキスは凄く柔らかくて優しくて。

天にでも昇りそうなキスだった。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ