
神様の願い事
第2章 秘密
翔「今日、何も持ってないんだ」
「いいよ別に」
廃れた商店街を夜中に彷徨う。
特に願いがあった訳でも無いし、会いたいと願った訳でも無かった。
翔「どうして来てくれたの?」
「だって呼んだじゃん」
翔「え、俺? 呼んでないよ?」
「呼んだよ。ココにいるのがその証拠でしょ」
寂しかったのかな。
胸が痛んで苦しくて、あの柔らかさに癒されたかったのかもしれない。
翔「ん...? 神様、ひょっとして酔ってない?」
「別に酔ってないし」
翔「酒臭いんですけど」
普通に話しているようで、神様の足元はフラフラとふらついていた。
翔「ほら、転んじゃうよ。おいで(笑)」
「ん...」
俺の足に纏わりついてふらふらする神様に手を伸ばす。
すると、神様は簡単に俺に捕まえられたんだ。
翔「あぁ、やっぱ温かいな」
「ふふ、でしょ」
酒の匂いをプンプンさせてる神様は、俺の腕の中で大人しくまるまった。
翔「...寝ようとしてない? 話聞いてくれるんじゃなかったの?(笑)」
「だってここ、なんか落ち着く...」
頭を撫でてやるとうっとりと目を閉じる。
それで気持ち良さそうな顔をして、眠りに入ろうとするんだ。
翔「じゃ、寝てていいから、家連れてってもいい?」
「ん」
眠くて思考回路もままならないんだろう。
寝惚けた声で、一言うんと頷いただけだ。
翔「あ、でも。もし目が覚めたら少し話聞いて貰えるかな」
「少しならね」
素っ気ないけど。
これでも一応神様だ。
その姿は只の黒猫だけど、それでも今は立派な神様だ。
だってこの神様の温もりに触れただけで、俺の胸の痛みは少し和らぐんだから。
