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神様の願い事

第2章 秘密



俺は夢を見ているのか。

抱いて眠ったのは神様で、その姿は黒猫の筈だ。

なのに俺が今抱いているのは、一糸纏わずあどけない寝顔を晒すあの人だ。


翔「智くん...?」


顔を覗くと、やはりそれは智くんで。


翔「どうしてここにいるの...?」


その肩にそっと手を置き声を掛けても、すぅすぅと眠っているだけだ。


翔「これ、夢...?」


夢じゃなければ何なんだ。
智くんは服も纏わず俺のベッドで眠っている。
気持ち良さそうに、可愛い寝息を吐いて俺に抱かれてる。


翔「そうだよな…」


ブツブツと隣で呟いてても目を覚まさないんだ。
これは、智くんを俺のものにしたいと思った脳が勝手に見せた夢なんだ。


翔「智くん...」


その頬に手を伸ばしても起きなくて。
頭をそっと撫でても起きない。


智「ふ...」


キスをすると、さっき智くんの家で聞いたものと同じ、微かな吐息が漏れた。


智「は、ぁ...」


艶めかしい首筋に俺の唇が触れると、その吐息は甘くなって。


智「ん、ふ...」


その首筋を少し吸ってやると、甘い吐息は更に漏れる。


翔「...やっぱ夢か。そうだよな...」


撫でていたその頭に不思議な感触を受けた。


翔「ふふ、結構可愛いじゃん」


全く俺は。なんて夢を見てるんだ。


翔「ふふ...」


頭にぴょこっと生えた黒い耳。
それを撫でてやると、その耳はピクピクと動いて。


翔「神様と混ざったな...」


神様を抱きながら眠ったから。
智くんを想いながら眠ったから。


だから、智くんが猫になるなんておかしな夢を見てるんだ。


翔「はぁ...、結局夢かよ...」


現実にはこんなシチュエーションなんて起きる訳が無い。

それを分かってるから。

だから俺は、夢の中で、夢の中の智くんを抱いて眠る。



それくらいは許されるだろ。



だって、これは夢なんだ。







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