
神様の願い事
第2章 秘密
翔「あっハイ。もう着いてます」
朝、目覚めるともう俺の腕に温もりは無かった。
神様はいつの間にか消えていたんだ。
確かにいた神様と、おかしな夢。
それをぼーっと考えて過ごしていたらあっという間に夜になって。
そしたら、先輩から呑みの誘いの電話が入って、今は待ち合わせの場所にひとり佇んでいる。
松「よぉ」
翔「あっ松岡くん。すいませんわざわざ迎えに来て貰っちゃって」
松「いいよいいよ、早く乗りな」
後輩も既に乗っている。
しかしなんだのそタクシー乗り。先輩に失礼じゃねえか。
「あっ、櫻井くん。コッチです」
翔「え? だってお前...」
助手席のドアに手を掛けたら後輩に止められた。
櫻井くんはコッチですと、後ろに促される。
翔「お前、先輩に失礼だろ」
「いいんですよ今日は。大野くんも来ますから」
翔「へ?」
後部座席でコソコソと後輩に説教をする筈だったのに、思わずこんなところで大野くんというワードが飛び出して来た。
「知らないんですか? 大野くんが来る時は助手席は空けとくんです。暗黙の了解ですよ」
翔「え、なんで...」
「松岡くんの機嫌が良くなるからに決まってるじゃないですか」
大野くんて、本当に松岡くんに可愛がられてますよねえなんて、後輩は呑気に話している。
翔「ウチの大野が来る時はいつもそうなの?」
「前にね、知らずに助手席に座ったヤツがいるんですけど」
翔「うん」
「お前はコッチじゃねえよって、蹴っ飛ばされたらしいっす(笑)」
翔「マジで?」
「後で大野くんが謝ってましたけどね。松岡くんの代わりに(笑)」
まあ確かに気に入られてるし、智くんだって懐いてるけど。
まさかそれ程とは思わなかった。
まああの人はそんなに自分の事を話すタイプでもないし、俺が知らなかっただけなんだろう。
智くんが先輩に可愛がられるのは、俺は嬉しいんだ。
だってあの人は口下手だし、世渡りも上手くなさそうだし。
だけどそれ程までにと言われると。
「あ、ほら。大野くんが手ぇ振ってる」
あの嬉しそうな笑みにも、特別な何かが隠されてるんじゃないかと不安になるんだ。
