
神様の願い事
第2章 秘密
「歯ブラシ?」
和「ん」
この間翔さんが気にしてた。
それと同じような感覚を、きっと俺は感じてる。
和「や、なんも無いんだよ? それは分かってるんだけどさ」
「でも気になるの?」
和「気になるってか...、うん、仲が、良過ぎるんだよね…」
「...それってヤキモチじゃないの?」
和「は?」
ヤキモチ?
んな事ある訳無いじゃん。
だってアレだよ? 相葉さんだよ?
「だからイライラすんでしょ」
和「違うよ。アイツがデリカシー無さすぎるんだって」
「へ」
和「この間、あの人んちに泊まったんだよ。したら歯ブラシ無くてさ。めっちゃ笑顔で勧めてくんの。“松にぃの歯ブラシしか無いけどコレでいっか”とか言って」
「マジか」
和「腹立っちゃって。アイツが寝てる間に捨ててやったよ」
「ははっ」
和「笑い事じゃないんだって。 本当アイツどうにかしてよ」
俺がこんな気持ちを感じてるなんて、誰にも言った事無かったんだ。
だけどコイツは猫だし。
漸く吐き出せたと思ったら、なんだか少しスッキリした。
「どうにかって、どうも出来ないよ」
和「あ~、loveの願いじゃないから?」
「てか、人の思考を変える事なんて出来ないよ」
和「え、でも願いを叶えてくれるんでしょ? 恋愛成就させてくれるって事は、ちょっとくらい操作してんじゃないの?」
「んなのしてない」
元気の無さそうに見えた神様も、俺の愚痴を聞いて笑ってた。
だけど急に真面目な話をし出して。
「人の気持ちに操作なんていらない」
俺をじっと見つめて。
「彼は、ちゃんと進んでるよ? 自分で変えようって、頑張ってるみたいだよ?」
和「え...?」
「君も、彼をちゃんと見てたらわかるんじゃないかな」
猫に諭されるなんて。
「ま、今の状況が納得出来ないんだったら、君も行動しなきゃね」
和「行動って、一体何を...」
「ふふ、それくらい自分で気付かなきゃ」
優しく笑う神様は、まるで菩薩のような顔をする。
そんな顔で、小首を傾げる俺を見守ってるんだ。
和「気付く、ねえ」
そうだよと笑うわりに、相変わらず神様は溜息を吐いてるけど。
俺に余裕が出来たら、今度は神様の話を聞いてあげようかな。
猫だってそれなりに、悩み事があるのかもしれないから。
