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teardrop

第5章 5滴

その頃、透花はポツポツと降り始めた雨に気付いてベランダの洗濯物をとりこんでいた。

新学期が始まってから、透花はまだ学校に一度も行ってない。

雨は嫌な記憶が甦る。

透花は憂鬱さを感じながら窓から聞こえる雨音を聞いていた。

最近、学校が終わると現れるようになった藤沢。

一昨日はプリントだけ渡すと何も言わず帰って行ったが他の日は一言二言話すだけで、目的が全くわからない。

『…明日も学校の後で来るつもりかな』

そう思いながら窓の外を眺める。

暫くすると雨音に混じって聞こえるスクーターの音。

何気にその音を追うように、下を見ると藤沢がマンションの前にスクーターを止めた。

日曜まで来た藤沢に呆れながら下に降りて行く。

マンションの入口に立って静かに溜め息をついた透花。

「よお!」

学校もない日曜まで雨の中、わざわざ来る意味がわからない。

「明日、学校来るか?」

「そんな事、わざわざ聞きに来たの?」

「お前がずーっと学校に来ないから」

雨の憂鬱さもあって、透花は思わず「私が学校に行くか行かないかなんて関係ないでしょ!」と強く言った。

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