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teardrop

第5章 5滴

藤沢の髪から水が滴り落ちる。

透花は藤沢に「ちょっと待ってて」と言って一旦家に入ると、タオルを持ってきた。

「これ使って」と言ってタオルを渡そうとする透花。

「要らねー」

そう言うと藤沢は顔に滴る水滴をシャツの裾で拭おうとする。

その手を透花が遮って、タオルを藤沢の顔にあてた。

藤沢は「いいって言ってんのに…」と言いながらタオルを手に取る。

少しの間、雨を眺めてた二人。

藤沢が突然「前にも同じような事、あったよな」と言い出した。

「最初に会った時も、俺が要らねーっつってんのによ…今みたいにさ」

透花は初めて藤沢と出逢った日を思い出す。

「あの時、お前が去り際に俺に何て言ったか覚えてる?」

「…覚えてない。私、何か言った?」

思い出し笑いをする藤沢。

「口の中切ってんなら暫く塩辛い物食べるなって…何だソレ?って思ったし」

「…言った…ね。思い出した…」

何だか恥ずかしくなる透花。

「怪我…何で…」

途中まで言いかけるが、透花は自分も真紀達に同じ場所で袋叩きにあった事を思い出して黙ってしまう。

言いかけたままの透花に藤沢が言う。

「…何で、あんなとこで怪我してたかって聞きてーのか?…喧嘩したからに決まってんだろ」

透花は「喧嘩…」と呟いて藤沢の顔を見た。

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