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teardrop

第5章 5滴

「入学式ん時から、やたらと絡んでくるウゼェー先輩がいてよ」

藤沢は少し迷惑そうな表情をして話す。

「まぁ、先輩に限らず中学ん時からよくいろんな奴に絡まれんだけさ…この髪の色のせいで」

髪の先を摘まむと「昔から地毛だっつっても誰も信じねーんだよな…」と言った。

透花は「地毛なの?…染めてるんじゃなくて?」と少し驚きながら聞いた。

「んな、面倒臭ぇ事しねーよ」

「そう…」

「…どーせ、お前も信じてねーんだろうけど…」

藤沢が言うと、透花は「ううん…本人がそう言ってるなら、そうなんでしょ」と答えた。

藤沢がしゃがんだので、透花の目線より下に藤沢の髪が全体的に目に入る。

「喧嘩…怖くない?」

「んな事、いちいち思っていたら外なんか歩けねーだろ」

「絡まれないように、黒く染めようとか思わないの?」

「意味が無いんだよ。すぐ生えてくんだぜ。2色になって余計、目立つじゃねーか」

『あ、そうか…』と思った透花は更に考えた。

「じゃあ…」

「待て!…お前、俺に坊主とかスキンヘッドにすればって言うつもりなら…殴んぞ」

透花は思わずスキンヘッドにした藤沢の姿を想像して笑ってしまい、慌てて口元を手で隠した。

藤沢が「何、笑ってんだよ」と言うと、透花は首を横に振って「笑ってない」と誤魔化した。

「この髪の色のせいでムカつく事多いけど、俺はどーにかしようなんて思わねーし…こーゆー髪だから仕方無いってのもあるけど、これが俺なんだ」

髪をかきあげながら藤沢はそう言った。

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