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teardrop

第5章 5滴

「喧嘩が怖いなんて考えるより、ウゼェけど言ってもわかんねー奴に絡まれたり喧嘩売られたら買うだけ」と話す。

「…逃げようとは思わないの?」

「あーゆー奴らはしつけーからな…逃げても意味ねーのはとっくに、わかってんだよ。だから立ち向かうしか無いだろ」

藤沢の言葉が身に染みるように感じていく透花。

少し目を閉じて『逃げても意味が無い…か…』と思う。

透花は目を開くと藤沢の髪を見つめて「私は…その髪、最初に見た時から綺麗って思ってるよ」と言った。

藤沢は透花の言葉に急に照れを感じて動揺する。

それを必死で隠そうとしてバランスを崩しかけるが、慌てて立ち上がり体勢を整えた。

そんな事はお構いなしに透花は空を見上げている。

「…雨、やんだね」

話している間に雨はあがっていた。

藤沢は透花にタオルを返して「これ、サンキューな」と言うと、大きく腕をあげて伸びをする。

そして羽織ってたシャツを脱いでTシャツになると、脱いだシャツで濡れてるスクーターのシートを拭いた。

「そろそろ、帰るわ」

透花は2、3歩前に出て見送ろうとする。

エンジンをかける音が響く。

「明日、学校来いよ!待ってっから」

無言のままの透花に藤沢は「じゃーな」と言うとスクーターを走らせて帰って行った。

辺りにまだ残る排気ガスの匂いを透花は感じながら、さっきまで藤沢が話してた事を思い返していた。

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