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teardrop

第6章 6滴

夜になり、窓の外から空を見上げて藤沢の話を思い出しながら物思いに更ける透花。

雨が降った後で空気が澄んで、月が綺麗に見える。

「…学校、行ってみようかな」

クリーニングの袋を被ったままの制服を見る。

そして、袋を外した。

時間割りなんてわからないから、とりあえずノートと筆記用具と5教科の教科書だけを鞄に詰め込む。

寝る前は色々と嫌な事ばかり考えて憂鬱な気分になる透花。

いつものように嫌な事を思い出すが、その度に耳にまだ残る藤沢の声が甦る。

闇夜に浮かぶ月はまだ三日月で、笑ってる藤沢の口元に見えた。

透花は何度も藤沢の言葉を思い出しながら眠りについた。


透花が寝静まって暫くすると、静かに瞼を開くもう一人の人格…蓮葉。

「怖いなんて考えるより…立ち向かうしか無い…だなんて。…良いこと言うね…あの男…」

起き上がって月を見ながら呟く。

「おかげで、透花もやっと動きだす気になった…あの二人の女、次は何をしてくるか楽しみだわ」

夜空を仰ぐ。

「ふじさわ…はると」

左手を月にかざし、指先でなぞるようにしながら見る。

「気に入った…」

そう囁いて、夜が更けるまで蓮葉は月を眺めていた。

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