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teardrop

第1章 1滴

母は「あ、透花。晩御飯まだでしょ。はい、これ食べて」と手元にあった買い物袋を透花へ差し出す。

渡された買い物袋の中を見ると割引きシールが貼られたスーパーのお弁当が入っていた。

「お姉ちゃんのご飯、私が選んだんだよ。安くなってたからお得だよね〜」

透花は袋を見つめながら「うん…ありがとう。でも今日は何か食欲ないから、明日の学校のお弁当に詰め替えて持っていくよ」

そう言うと透花はお弁当を袋ごと冷蔵庫に入れて、自分の部屋に戻った。

透花は父と母と妹の4人家族。

母は若い時に結婚もせず透花を産んだ。

透花が3歳の時に、母が父と結婚して妹が産まれた。

父は初めての我が子に凄く喜び、母も幸せそうだった。

一見、理想的で幸せな家庭を絵に書いたように見えるが、家族の中で透花だけは別。

透花は母の連れ子。

父は昔から時々、透花に暴力を奮った。

口癖のようによく「自分の子でもないお前を育ててやっている」と恩着せがましく透花に言う。

母は妹ばかりを可愛がっていて、透花が父から暴力を受けていても、見て見ないふりをする。

妹は両親から可愛がられ、素直ではあるが姉である透花を下手に見ているとこがある。

部屋に戻った透花はすっかり成宮の告白の事も忘れ、何だかモヤモヤする気持ちを無心にするために宿題に集中した。

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