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teardrop

第1章 1滴

松本の言葉に透花も後ろを振り返って、空席のままの机を見る。

「アイツ、入学早々に風邪ひいたみたいで休んでたけど…今日、学校に来るって言ってたのになぁ」

松本の話によると藤沢ってクラスメイトは新学期初日には学校に来ていたらしい。

透花より後ろの席だし、入学早々から学校を休んだままの人がどんな人かなんて気にもしてなかった。

だから藤沢ってクラスメイトの顔は覚えてない。

二時間目の鐘が鳴って、先生が教室に入ってくると松本は慌てて自分の鞄から教科書やノートを出している。

透花はもう一度、後ろの空いた席を見たが印象にもない人に興味は持てず、気にする事なく授業を受けた。

結局、その日も藤沢は来る事がなかった。


翌日、透花はまた遅刻しそうになってたが、ギリギリで学校に着いた。

すると、玄関先が騒がしい。

立ち並ぶ下駄箱が邪魔でよく見えないが、チラッと先生と上級生らしき男子の姿が見えた。

「いい加減、やめないかっ!」と怒鳴る先生の声が大きく響いて、透花は慌ててその場を去る。

「やだやだ…男の人の怒鳴り声って苦手」

透花は怒鳴り声をあげる父の姿を脳裏に浮かべながら教室に向かった。

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