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teardrop

第5章 5滴

透花と再開した翌日。

昨夜、松本は母親にカコキュウの事を聞いた。

松本の母は看護士だから職業柄詳しかった。

過呼吸とは正しくは過換気症候群というもので、精神的な不安によって発作を起こす心身症の症状だと知った。

念のために、藤沢が聞き間違えてるであろうタコキュウも何か訊ねる。

もしかしたら多呼吸(タコキュウ)という病気もあるかもしれないと思い、一応聞いてみた。

だけど案の定、松本の母親は呆れ顔で「それ…タコと胡瓜のサラダか酢の物」と答えた。

松本は恥ずかしい思いをして『藤沢のバカヤロー』と思う。

「どうしたの?急に過呼吸の事なんて聞いたりして?」

松本は母親の問いに、少し暗い表情になる。

「うん…今日、友達がその過呼吸になってさ…凄く苦しそうだったんだ」

そんな松本の様子に母親は詳しい症状や応急措置の方法を教える。

そして「早く、その子が良くなるといいわね」と優しくなだめるように言った。

「ところで、夏休みの宿題は終わったの?」

表情や声を一転させる松本の母親。

「えっ?宿題?…忘れてたーっ!うわぁ〜やばい…俺も過呼吸なるかもーっ」

「あら、あんたに過呼吸なるような神経なんてあったかしら?ちゃんと、やりなさいよ」

そう指摘しながら松本の母親は明るく元気に笑い飛ばした。

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