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teardrop

第5章 5滴

夕方近く。

藤沢が原チャリに乗って走ってると、買い物袋を下げて歩く松本を見つける。

そして声をかけ、松本の横で止まった。

松本は藤沢を疑惑の目で見ながら声を潜めて言う。

「その原チャ、どっからパクってきたんだ?」

「パクってなんかねーよ!わざわざ免許取って、盗んで捕まったら意味ねーだろ!お前、馬鹿かっ!」

怒る藤沢に松本は「そりゃ、そーだ」と言いながら笑った。

「でも藤沢ならやりそうな気も?」

藤沢はスクーターに跨がったまま、松本に蹴りを入れようとするが松本は買い物袋に衝撃が無いよう、うまくかわした。

「冗談だって!やめろよ。玉子が割れんだろ」

「買ったんだっつーの!今日、納車だったんだよ」

松本の手にはスーパーの袋が下がっていて、長ネギが飛び出している。

その姿を見て藤沢は「…お前は…昼下がりの主婦か?」と仕返しのように言う。

松本は母親から頼まれた買い物帰りで、長ネギを剣にして藤沢を突ついて攻撃した。

ネギが嫌いな藤沢はネギ臭さにスクーターのエンジンをかけて逃げた。

そして、そのまま戻る事無く去った。

「いいなぁ…原チャ、買ったのかぁ。藤沢って金あんだな…いつの間にかバイトでもしてたのか?俺も、免許とったんだから原チャリ欲しいな…」

松本は夏休み中にバイトでもしとけば良かったと今更ながらに考えながら家へと帰っていく。

そして、まだやり残したままの夏休みの宿題に頭を痛めながらとりかかった。

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